——医薬の専門家とAIの専門家が力を合わせるという話でしょうか?
それが鍵なのです。AIにおける難関は、問題領域を理解している人、すなわち創薬の専門家と、テクノロジによって実現可能なものごとを理解できる専門家を引き合わせるところにあります。というのも、手に入れやすい成果を見つけ出すのが鍵になるためです。
どのようなプロセスを用いても、完全な形でものごとが解決することはほとんどありません。人間が遂行するプロセス全体を考えた場合、大量の文献を読んだり、分析を行う必要のある繰り返し作業があります。こういった作業を人間ではなくコンピュータに任せられれば、そのプロセスを最適化できるはずです。
本当に興味深いのは、創薬の専門家とAIの専門家を引き合わせ、話をさせれば、このような難関を乗り越えられるという点にあるのです。
すべての作業をコンピュータで置き換えるわけにはいきません。鍵は、コンピュータで何を置き換えるのかなのです。
——つまり、鍵はプロセスだというわけですね?
それこそが私に与えられた使命です。つまり、プロセスの体系化がその目的というわけです。私がこの会社に入る前には、プロセスが2つのステージに分かれていました。最初のステージは、開発者とAIの専門家に対して、何をなすべきかについて考え出させるというものでした。そして、この部分がうまく機能していなかったのです。
2つ目のステージ(ここでは優れた成果を上げていました)は、最初のステージの成果をうまくまとめ上げるというものです。つまり、創薬の専門家とAIの専門家が同じ部屋に集まり、力を合わせて何らかの成果を生み出すというわけです。
私は3つ目のステージに向け、プロセスをより体系化するようにしました。体系化によって、インパクトを実際に定量化できるようになるのです。
内部でコンペを開催するようにしたという見方もできるでしょう。つまり、最も有望な候補をマシンに作り出させ、人間に評価させた後、予測精度を向上させるためにアルゴリズムをより良いものに変え、洗練し続けていくのです。
——今はどのような状況ですか?
医学文献を理解し、さまざまな関連を見出せるとともに、医薬の専門家が使用できるような優れたAIツールがあれば、上述したプロセスの進捗速度を高められるという点を、この1年で証明してきました。
既に、こうしたテクノロジを用いて、新薬となり得る候補を洗い出せています。既に成果は上がっているのですが、そのプロセスをより堅牢に、そしてより厳格なものにしようと現在でも取り組みを続けています。
とは言うものの、今やプロセス全体を通して遂行できるようになっています。当社は現在、リサーチだけでなく、自らの手で臨床試験を実施しています。またこのプロセスも、コンピュータを活用したテクノロジで改善していくことになります。