SAPは11月8日よりスペインのバルセロナで「SAP TechEd 2016」を開催している。
20周年を迎えたイベントでは、エグゼクティブ・ボード・メンバーでプロダクト&イノベーション担当のBernd Leukert氏が「SAP HANA 2」として最新世代のインメモリデータベースを発表、集まった開発者にPaaSの「HANA Cloud Platform」の魅力をアピールした。メッセージは「データ、ユーザー、ビジネスの解放」だ。ここでは、中心となるデータの解放の部分をレポートする。
HANA登場から6年ぶり、第2世代の「HANA 2」
イベントの最大の発表となったのは「HANA 2」だ。HANAは2010年にSAPが発表したインメモリ基盤。SAPの共同創業者でスーパーアドバイザリーボード会長のHasso Plattner氏と当時最高技術責任者(CTO)を務めていたVishal Sikka氏(現Infosys CEO)が中心となって数年がかりで開発したもので、Leukert氏はSikka氏の後任的立場となる。
当時を振り返って「SAPがデータベース事業に参入すべきかについては、社内外で疑問視する声があった」と振り返る。HANAは順調に受け入れられ、現在SAPソフトウェアの基盤となった。「HANAの価値に対する疑いはなくなり、リアルタイムのデータ処理の同義語になっている」とLeukert氏は成功を強調した。
6年後の登場となるHANA 2は、データベース管理、データ管理、アナリティクス、アプリケーション開発の強化の4つが特徴となる。
「SAP HANA 2」
データベース管理では、「active/active read-enabled」として、読み込み主導のクエリにセカンダリシステムを活用することで負荷分散の効率を改善するオプションなどが加わった。これまではレプリケーションのみに使っていたセカンダリシステムを使って、ワークロードをオフロードすることでオペレーションを改善する。セキュリティ、管理機能なども強化された。
データ管理では、モデリング、統合、データ品質などの強化により、データが保存されている場所を問わずに活用できるようになった。複雑な情報アーキテクチャの管理や実装前に新しい技術のインパクトを視覚化できるウェブベースのソリューション「SAP Enterprise Architecture Designer」も提供される。
アナリティクスでは、テキスト、空間、グラフ、ストリーミングデータの処理エンジンを強化した。予測分析ライブラリに新しいアルゴリズムが加わり、データサイエンティストは新しいパターンを発見してカスタムアプリケーションに機械学習を組み込むことができるという。
アプリケーション開発では、”Bring Your Own Language”としてSAP HANA拡張アプリケーションサービスで利用できるビルドパックやランタイムの選択肢が増え、より深い洞察を得るためにテキストとメタデータを抽出するファイルプロセッサAPIも加わる。
HANA 2では、「Express Edition」として無料でHANAを利用できるエディションも用意する。これは「HANAを使うにあたっての障害を低くしてほしい」というコミュニティの要望に応えるもので、32GB分のメモリも含む。
HANA 2は11月末に、Express Editionはその後すぐに提供を開始する予定だ。