IaaSは「SoftLayer」、PaaSは「Bluemix」とこれまで別々だったクラウドサービスのブランドをBluemixに統合したIBM。IaaSに注力しなくなるのでは、とも受け取れるが、果たしてどうか。
IBMがIaaSとPaaSのブランドを統合した理由
会見に臨む日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長
「ブランドを統合したのは、IaaSとPaaSにおいて複数あったものをクラウドプラットフォームとして統一し、お客様にわかりやすいようにするためだ。PaaSのブランドに統合したからといって、IaaSのサービスがなくなるわけではない」
日本IBMの三澤智光 取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長は11月7日、同社が開いた記者会見で、クラウドサービスにおけるブランド統合とIaaSについてこう強調した。
ブランドの統合については、米IBMが10月、IaaSのSoftLayerを「Bluemix Infrastructure」と改称し、同社のクラウドプラットフォームにおけるサービスのブランドをPaaSのBluemixで統一すると発表。三澤氏はその理由について、図を示しながら冒頭のように説明した。
IBMはクラウドプラットフォームにおけるサービスのブランドを統一した
ブランド統合をはじめ、クラウド事業の最新動向を説明した会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここではIaaSに注目したい。というのは、PaaSのブランドに統合されたことで、「IaaSのサービスがなくなるわけではない」というものの、今後注力しなくなるのでは、とも受け取れるからだ。
ベアメタルならではのコストメリットとは
そこで、筆者は会見の質疑応答で、「IBMはIaaSでAmazon Web Services(AWS)と戦い続けるのか」と単刀直入に聞いてみた。すると三澤氏は、「IaaSの手を緩めるつもりは全くなく、今も競合とはガチガチのコンペを繰り広げている」とした上で、IBMのIaaSの優位性について次のように語った。
「当社のIaaSはベアメタルとグローバルネットワークに大きな特徴がある。ベアメタルは仮想化という無駄なレイヤがないので、ハイパフォーマンスなコンピューティングを利用してもらえる。また、グローバルネットワークは全世界40カ所以上に設置されたIBMクラウドデータセンターのバックボーンのネットワークを無償で利用できる。この2つの機能は、競合他社にはない当社ならではの優位性だと自負している」
とはいえ、ユーザーがまずIaaSに求めるのはコストメリットだ。IBMはコスト面でAWSに真っ向から戦い続けていくのか。そう問いかけると、三澤氏は次のように答えた。
「これまでのIaaSはクラウドネイティブなアプリケーションに利用されることが多かった。しかし、ここにきて既存のオンプレミスシステムをクラウドに移行する動きが出てきた。既存のシステムではVMwareの仮想化環境が使用されているケースが多いが、その仕組みをそのままIaaS上に移行させることはベアメタルでないとできない。ベアメタルでないIaaS上に移行させるには、仕組みを作り直さなければならない。実はその作り直しが結構なコストになる。IBMのIaaSではそのコストが全くかからない。既存システムをクラウドに移行する際のコストメリットは、そうした点にぜひ注目していただきたい」
ちなみに、先ごろAWSとVMwareが提携を発表したが、その内容はAWSクラウドのベアメタル上でVMware環境を実現し、ハイブリッドクラウドの構築を容易にするというものだった。これに対し、三澤氏は「要はAWSがベアメタルを保有して既存システムのクラウド移行に対応しようというもので、当社と同じ狙いだとみられるが、実施は1年後と聞いている。当社はすでに使える状態になっている」と語った。
三澤氏の発言から、IBMはIaaSでAWSと戦い続ける覚悟だ。果たして追撃することができるか、注目しておきたい。