土台のPaaS「HPC」--Appleとの提携、オープン性、マイクロサービス
最後の「ビジネスの解放」では、アプリケーション構築が中心となる。
Leukert氏はまず、9月に発表した「SAP Build」を紹介した。PaaSの「HANA Cloud Platform(HCP)」をベースとしたクラウドサービスとして提供される。共同作業でのプロトタイプ開発が可能で、ギャラリにあるFioriベースのプロトタイプサンプルで設計に取り掛かることができる。エラーの発生は要件定義と設計の間でよく起こるが、ここでのエラーは「高くつく」とLeukert氏。アーリープロトタイプにより高価なエラーを削減するもので、デザインシンキングを開発に持ち込むものだ。
HCPは接続性やコラボレーションツール、モバイルサービス、ユーザー体験といった開発に必要な幅広い技術やツールを備える。包括的な開発環境に加えて、Cloud Foundry、OpenStackなどのサポートもあり、Leukert氏は「HCPはオープンだ。これは他者との差別化になる」と優位性を強調した。抽出レイヤーとなるためベンダーに依存することなく、ベンダーロックインを回避できるという。
ユースケースとしてはスタンドアロンのクラウドアプリ開発、SAPオンプレミスアプリのクラウドアプリによる拡張、疎結合アプリを経由してのSAPクラウドアプリの拡張といったユースケースを持つ。既存の拡張では「データの解放」で触れたように、マイクロサービスを強化している。SAPソリューションのAPIハブとなる「SAP API Business Hub」では、S/4 HANA Finance、S/4 HANA Marketing Cloud、SAP Hybris Product Content Managementなどが新たに加わった。
新しいアプリでは5月に発表したAppleとの提携に触れた。当時の年内に提携の成果物を発表するとしていたが、予定通りTechEdでは「最初のマイルストーン」として、HCPにiOS向けのSDKを統合した「SAP HANA SDK for iOS」を発表、SAP Fioriでのサポートも進めた。
HANA SDK for iOSはまずは一部顧客向けにアーリーアダプタープログラムとして提供する。また、教育トレーニングプログラムのSAP Academyでも「SAP Academy for iOS」としてコースの提供を2017年春よりスタートする。
SAPとAppleはiOSネイティブのアプリの共同開発も進めているが、エンタープライズを熟知したSAPとモダンなインターフェイスのデザインで知られるAppleの合体により「あらゆる業界のプロセスに新しい創造をもたらすことができる」とLeukert氏は潜在的インパクトを語った。