米オラクルがクラウド市場におけるトッププレイヤーへの仲間入りを急いでいる。AWSやマイクロソフトなど大手クラウド事業者に市場を奪われているからだろう。
圧倒的なリーダーであるAWSクラウドの性能を上回るサービスを用意し、「2020年にナンバーワンになる」と意気込む。伸び悩む業績を成長に転じるためでもある。
AWS攻撃に打って出る
10月末に来日した米オラクルの役員が、AWSと比較したオクラルクラウドの優位性を力説した。
クラウド担当のスティーブ・ダヒーブSVP(シニア・バイスプレジデント)は、オラクルクラウド(IaaS)の特長をAWSより約20%安価で、処理性能は数十倍速いと説明する。データベース・サーバ技術担当のアンドリュー・メンデルソン氏(エグゼクティブVP)はその前日、「どちらがベストなのか、誤解している」とし、「オラクルDB(データベース)を最適化しているのは、オラクルクラウド」と訴える。
具体的には、両社のクラウド上で稼働するオラクルDBのベンチマーク結果を披露し、オクラルクラウドとAWSの性能差はOLTPで8倍、データウェアハウス・クエリーで24倍にのぼるなどと説明。さらに、AWSが投入したAuoraなどのDBについて、「AWSでしか使えないDBだが、オラクルDBはAWSでもAzureでもオンプレミスでも使える」と、オラクルのオープンな姿勢を強調する。
ラリー・エリソン会長は7月、富士通との協業発表した際、「HCM(人事)の新規顧客の100%がクラウドだ。今後、ERPやSCM、製造、マーケティング、営業セールスへと広がる」と、クラウドの需要拡大を予測する。だが、AWSがオラクルDBやERPなどアプリケーションのユーザーを次々に獲得する。オラクルDBのリプレースをも狙ったAuoraなどDB群をそろえるAWSは、大きな脅威にもなるだろう。
クラウドに移行するユーザーが予想以上に増える中で、オラクルがクラウド巨人を攻撃するのは当然のことにも思える。攻撃の材料は価格性能比だけではない。サービスの品揃えの違いとロックインの危険性をユーザーに説く。オラクルはIaaS、PaaS、SaaSをカバーする。
加えて、「AWSはパブリックのみだが、オラクルにはパブリック、プライベート、オンプレミスの選択肢がある」(ダヒーブSVP)とし、ワークロードをどの環境にも容易に移行できる点を売り込む。自前のサーバーにストレージ、OS、DB、アプリケーションを統合したクラウド製品を用意できるのも、オラクルだけだという。