展望2020年のIT企業

クラウドシフトをオラクルが急ぐ理由 - (page 2)

田中克己

2016-11-28 07:30

2020年にトップグループの仲間入り

 オラクルの業績は伸び悩んでいる。純利益は12年度(12年5月期)の99億ドルから16年度に89億ドルになり、売り上げも12年度以降、380億ドル前後の横ばい状態。前年度比約3%減の370億ドルに落ち込んだ16年度と371億ドルの12年度を比較すると、ソフトのライセンス販売と保守は横ばいだが、ハード事業が大きく減少している。それをカバーしたのがクラウド関連になる。

 IaaSを含むクラウドの売り上げは、16年度に36%増の約29億ドルに。17年度第1四半期(6月~8月)も59%増を記録し、この伸び率を持続すれば、年間で50億ドル近くになる。100億ドルを目指し、クラウドERPのネットスイートの買収なども進める。

 対するAWSの売り上げは急拡大しており、16年度も上期60%増から推測すれば、120億ドル超に達する勢い。オラクルはAWSを上回る成長を遂げなければ、クラウド市場のトップグループには入れない。まずはクラウド市場の第2集団を形成するマイクロソフト、IBM、グーグルの3社に追いつくこと。価格性能比やオープン性、品そろえなどで仲間入りを果たす。

 キャッチアップには、日本市場の開拓もカギを握るだろう。5期連続の増収増益の日本オラクルのクラウドの売り上げは16年5月期に40%増の46億円となる。総売上高の3%弱だが、杉原博茂社長は「パブリッククラウドはまだ始まったばかり」とし、顧客獲得のチャンスはいくらでもあるという。

 「DBソフトをライセンスする会社からクラウドナンバーワン・カンパニーを目指す。古いものを否定するのではなく、新しいことに挑戦する」(16年5月期の決算説明会)。クラウドに対応できないITベンダーは再編・淘汰の波に飲み込まれる。IT産業のアーキテクチャの変遷が証明していること。オラクルはクラウドの先に、どんなビジネスモデルをみているのだろう。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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