NetSuiteの買収を完了したOracleが次に目指すのは、中小企業顧客の維持や開拓、そうした顧客に対する上位製品の販売になるはずだ。
Oracleは米国時間11月7日、NetSuiteの買収を完了した。総額93億ドルというこの買収により、Oracleはクラウド事業の拡大とともに、より規模の小さな企業を見据えた有効市場(TAM:Total Addressable Market)の拡大を急ぐ。
Oracleは5日、7月に発表していたNetSuiteの株式公開買い付けの成立に必要な条件を満足できたと発表していた。この買収が完了するまでにこれほど長い期間が必要となったのは、NetSuiteの最大の法人株主である投資信託大手T. Rowe Priceが難色を示したという点が大きい。Oracleは必要な株式を取得するために株式公開買い付け期間を延長していた。
Oracleにとって、今回の買収にまつわる懸念は今となってはささいなことだ。一方、NetSuiteにとって取引の成立は重要だった。買収をめぐる不透明感を背景に顧客が様子見の姿勢を強めたため、NetSuiteは決算見通しを撤回せざるを得なくなったのだ。
では、買収成立後はどうなっていくのだろうか。長期的に見た場合、Oracleにとってこの買収は功を奏するだろう。短期的に見た場合、NetSuiteは統合にともなう痛みを経験することになるかもしれない。
JMP SecuritiesのアナリストPatrick Walravens氏は調査ノートのなかで以下の点を指摘している。
- OracleはNetSuiteの営業機会をレビューした。
- NetSuiteとOracleは合併前の統合プロセスを経てきている。
- ただしNetSuiteでは、営業担当シニアバイスプレジデントのMike Arntz氏など、営業部門で複数の人材が退職している。
こういった点から、NetSuiteを取り巻く最近の不透明感は今後もしばらく残る可能性が高いだろう。また、両社の営業チーム間で人事異動があるはずだ。さらに、Oracleは自社のクラウドポートフォリオにNetSuite製品を追加し、より規模の小さな企業に営業攻勢をかけるはずだ。
NetSuite買収の成否は主に、Oracleが中小企業顧客をつなぎ止めるとともに、市場の拡大に結びつけられるかどうかにかかっている。
Macquarie GroupのアナリストSarah Hindlian氏は調査ノートに以下のように記している。
Oracleは、NetSuiteの買収によってより規模の小さな企業を顧客とし、より大きなTAMを手にするようになる。また、同社で2番目に大きなソフトウェア製品、すなわちデータベースをクラウドに移行する動きとともに、同社のアプリケーションソフトウェアをクラウドへと移行する動きにも力を入れていくことになる。Oracleは同社のクラウドアプリケーションポートフォリオの1つとして企業資源計画(ERP)にも力を入れている。なお、同社のポートフォリオにはカスタマーエクスペリエンス(CX)を向上させる「Oracle CX Cloud」(顧客関係管理など)や、「Oracle ERP Cloud」、人的資本管理(HCM)ソリューションを提供する「Oracle HCM Cloud」がそろっている。ただ、CX分野ではSalesforce.comが、HCM分野ではWorkdayが優位に立っているため、Oracleはこれら3つのエンドユーザー市場のなかで最大のTAMとなっているERPに注力し続ける必要がある。
実際のところIDCの調査によると、2016年の市場規模はERPが540億ドルとなり、それに次いでCRMが320億ドル、HCMが120億ドルとなるという。
OralceはNetSuiteの主要顧客層である中小企業を取り込み、そうした企業をデータベースや他のクラウドツールの顧客として獲得しようとしている。ここでの疑問は、これまで大規模企業を主な顧客としてきたOracleが、中小企業を相手にうまく事業を展開していけるかどうかだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。