ガートナー ジャパンは、11月11日、「Gartner Predicts 2017」を発表した。このリポートは、2017年以降にIT部門およびユーザーに影響を与える重要な展望を示したもの。2017年の展望では、「エクスペリエンスとエンゲージメント」「ビジネス・イノベーション」「デジタル能力向上の結果から引き起こされる二次的影響」というデジタルイノベーションの3つの基本効果を検証している。
ガートナーは、2015年にデジタル変革が速いスピードで近づいており、2016年もその加速は続いているとしている。また、現在この破壊的変化は、一貫した変化の流れへと移行し、市場および業界全体を再定義するようになっているとしている。
同社は、10月16~20日に開催された『Gartner Symposium/ITxpo』で、以下の10項目の戦略的展望を発表した。
- 2020年までに、1億人の消費者が拡張現実を利用してショッピングを行うようになる
- 2020年までに、ウェブブラウジング・セッションの30%は画面を使用せずに行われる
- 2019年までに、ブランド保有企業の20%は自社のモバイル・アプリを放棄する
- 2020年までに、世界の10億人以上の従業員の行動が、アルゴリズムによって好転する
- 2022年までに、ブロックチェーンを採用したビジネスは100億ドル規模に達する
- 2021年までに、個人が携わる全活動の20%に、デジタルの巨大企業トップ7社のうち、少なくとも1社が関与するようになる
- 2019年末までに、企業はイノベーションに1ドル投資するごとに、その展開に対して7ドルの追加投資が必要になる
- 2020年末まで、IoTによるデータセンター・ストレージ需要の増加率は3%に満たない
- 2022年までに、IoTは保守、サービス、消耗品に関して年間1兆ドルのコスト削減を消費者および企業にもたらす
- 2020年までに、従業員の40%が活動量計を着用することで医療費を削減できる
(1)については、ARアプリケーションを使用して物理的な世界の上にテキスト、画像、動画、音声などのデジタル情報を重ねることは、店舗内外の両方において、より深い顧客エンゲージメントを得る手段の1つとなるとしている。
(2)については、音声インタラクションが、ウェブセッションの利用環境を、運転、料理、散歩、人付き合い、エクササイズの最中、また機械の操作中といった場面にまで広げるとし、その結果、目が覚めている時間のうち、オンラインリソースへアクセスしていない時間の割合はゼロに近づいていくとしている。
(3)については、20%の企業が、期待した成果を挙げていないアプリケーションを比較評価し、最終的にアプリケーションを放棄することで損失を減らす道を選ぶ、としている。
(4)のアルゴリズムは、コンテキスト化アルゴリズムのことで、インテリジェンスを拡張させることで、従業員は、完全に未知の知識を最適なタイミングで知ることができようになるとしている。
(5)については、ブロックチェーンアプリケーションは現金のやりとりを解消し、取引費用を減らし、ビジネス・プロセスを促進するとし、ブロックチェーンは、いまだ発展途上であるものの、将来的に製品および設備への投資として魅力的な選択肢となるとしている。
(6)は、Google、Apple、Facebook、Amazon、Baidu、Alibaba、Tencentという、売り上げおよび時価総額に基づく現在のデジタル大手企業トップ7社が、個人活動の多くにかかわるようになり、あらゆる活動にデジタルの巨大企業のいずれか1社が含まれる可能性があるとしている。
(7)は、イノベーションにおけるアイデア化ソリューションの設計、実装、統合、稼働、管理などのコストが、初期のイノベーションコストを大幅に上回ることがあると指摘している。このため、企業は、デジタルイノベーションおよびアイデア化フェーズで支出した1ドルごとに、当該ソリューションの展開に平均7ドルを支出するようになる、と予測している。
(8)では、IoTセンサデータ用途のストレージの割合は全体のわずか0.4%で、マルチメディアセンデータ用途のストレージは同2%を占めるのみだとし、合計でも2.3%にとどまると見込んでいる。
(9)では、IoTを活用したシステムが、アナリティクスにより、データの中に特定のパターンを発見し、経過時間や推定状況ではなく実際の使用および状況に基づいてメンテナンスを提案できるようになるとしている。また、センサで強化された現実世界のツイン (双子) からほぼリアルタイムでデータフィードを取り込み、他のデータソース (気象情報、ヒストリアン・データ、アルゴリズム、スマート・マシン分析など) と共にこのデータを利用するデジタルツインにも注目すべきだとしている。
(10)の医療分野の進化では、ウェアラブル製品やサービスが、現在、または過去にさかのぼり分析対象となる豊富なデータを提供し、医師やその他の医療従事者は、コンテキストに基づく情報および既往歴へアクセスすることができるようになる、としている。