藤本恭史「もっと気楽にFinTech」

「爆買い」終焉後のビジネス機会--越境ECとFinTech - (page 2)

藤本恭史

2016-11-14 07:00

訪日インバウンドから越境ECへの架け橋

 訪日インバウンドの観点からすれば、訪日観光客数のトップ3は中国、韓国、台湾ですが、訪日観光回数から見る2回目以降来訪率(リピート率)で見れば地理的に近いアジア地域だけでなく米国、豪州、英国も同様に高い比率を占めていることがわかります。また、そういった国々における越境EC利用率を並べて比較すると、中国、米国、英国のポテンシャルはもとより、シンガポールや豪州など、もともと越境EC比率の高い国の可能性が見えてきます。


主要国の訪日リピート率と越境EC利用率

 つまり何が言いたいかというと、海外の人にまず訪日してもらい、日本の素晴らしさを知ってもらってファンになってもらう。そして、訪日時に何かを購入してもらう際、素晴らしい顧客体験を提供することで、また買いたい、訪れたい、という気持ちになってもらう。そして帰国後も引き続き越境ECとして購入してもらうための仕組み(越境向けホームページ、グローバル対応決済、発送手配など)を提供することで、急成長を遂げる訪日インバウンドを、越境ECのビジネスチャンスにつなげていくことができるでしょう。越境ECはその国に応じたマーケティングを展開することが難しいと言われていますが、その国に1人のつながりのあるファンを獲得することは、ソーシャルメディアの時代に生きるわれわれには代えがたい資産となってくれるでしょう。

 訪日インバウンドは2桁成長で毎年増加し、今年は2000万人超えをすでに達成しています。一方、過去数年中国をはじめとするアジア諸国からの訪日によって巻き起こった“爆買い”は、中国政府による関税政策の変更と円高の影響を受けて、終焉しました。さて、われわれは爆買いが社会現象化している間に、そういった購買意欲の高いお客様をきちんと捕まえ、そして越境ECにつなげていくことができたいのでしょうか?

 残念ながら答えは限定的だった、ということになるのではないかと思います。どこかの記事で読んだのですが、爆買いという言葉は、売れると思っていなかったものが大量に売れたので“爆買い”という言葉になったのだろう、と書いてありました。これは言い得て妙だと思いますが、ゆえにバブルの売り上げに浮かれて、その次のビジネスチャンスにつなぐ戦略的なアプローチはなかなかできなかったのではないかと推察します。

 しかし爆買いがなくても、日本から中国へのB to C越境EC規模は前述の通り7956億円で31.2%成長、米国へは5381億円で10.5%成長です。非常に大きな市場が控えており、そしてこれからさらに加速していきます。その需要に向けて、O2O(オンライン to オフライン)戦略を整理し、訪日インバウンドの旅行体験を越境ECでの継続的な購買に繋げていくことは、限られたマーケティング手段しか選択肢のない越境において重要な顧客接点からのカスタマージャーニーになりますし、何よりおもてなしによる顧客体験が得意な日本だからこその越境EC戦略と言えるのではないでしょうか。

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