昨今、銀行業界ではデジタル化を背景に、サービスが見直されています。その1つとして注目されているのが、銀行が保有している顧客の資産残高情報などを、顧客との同意に基づき、銀行外部のサービスがアクセスできるようにするAPIの公開です。
住信SBIネット銀行は3月にアプリ開発者向けのAPIを公開。日本IBMは6月にフィンテック関連のサービスを展開する企業との「FinTech共通API」の接続検証をしたことを発表しました。
こうした銀行のAPI公開(API化が)進行する状況を受け、今年の7月から、金融審議会の「金融制度ワーキング・グループ」で「中間的業者規制」についての検討が始まりました。ここでは、銀行のAPI公開が進んだときに、銀行と利用者の間に入る業者にどのような制度的枠組が必要かを議論しています。
マネーフォワードは10月に国内で初めて法人向けインターネットバンキングのAPI連携を開始 みずほ銀行が提供する「API連携サービス」を利用することで、会計などビジネス向けSaaS群「MFクラウドシリーズ」のユーザーは自身のインターネットバンキングのIDとパスワードをマネーフォワードに事前登録せずに取引データなどを自動取得することが可能になった
銀行業務を提供することだけが銀行の価値ではなくなる
現在、銀行のAPI化は世界的に見てイノベーションの要であるという認識が高まっています。オンライン決済などが普及し、今や銀行機能は、銀行で提供されることだけが唯一の価値ではなくなっています。
例えば、Alibabaグループが運営する中国のオンライン決済サービス「Alipay(アリペイ)」には、約4億6000万人のユーザーがいますが、それを2020年までに20億人に増やすようにと、アリババ創業者のジャック・マー(Ma Yun)は発言しています。20億人というのは、日本人も含め、ありとあらゆるところでAlipayが使われる社会のことです。
Alipayでは、銀行を経由せずに、小売り業者がQRコードなどを読ませるだけで支払い決済が終わります。また、もし余ったお金があればそれを運用することも可能となっています。近い例を挙げるなら、楽天です。楽天は自らの経済圏を築いています。楽天市場でポイントを貯め、楽天ポイントが貯まるカードを作ってカード経済圏を形成し、その資金調達側では銀行預金がある、ということがうまくいっている一例です。
しかし、銀行がそういったサービスに参入しようとしても、決済端末を銀行業として配るのでは追いつくのは厳しいというのが現状です。参入するためには、POSや小売、Amazonなど、実際にデジタル経済で商売ができるところと組まなければならないでしょう。
そこで決済を自分のプラットフォームでやってもらおうとしたときに、API化をして、いわゆる中間的業者に入ってもらうことが必要になると考えています。上手く協業できないと、銀行の役割をGoogleや楽天のようなIT企業にとられてしまうリスクがあります。銀行としては中間的業者と上手く協業することで、そのリスクを排除したい側面もあります。これが今回の議論の背景にある事情だと考えています。
中間的業者が入る場合には、責任の所在が分かりにくいところがあるので、制度によって明らかにすることが求められています。それでは実際にどのような制度が検討されているのかを見ていきましょう。