IT部門の挑戦的対処でビジネス部門との良好な関係を維持
IT部門はこうしたクラウドストレージサービスについて、まず企業内の誰が、どのようなサービスを利用しているか、そして、どのようなファイルが共有されているのかを可視化をして、正しく把握することが重要です。これにより、ビジネス部門のニーズを把握しやすくなります。
例えば、マーケティング部門が、業者に発注した動画ファイルを事前確認の目的で送ってもらうとします。業者側が個人向けクラウドストレージサービスを利用して動画ファイルを共有しようとした場合、ビジネスニーズを理解せず、個人向けクラウドサービスへのアクセスを一律に禁じてしまえば、ビジネス部門からの不満がでることでしょう。逆に「IT部門は理解してくれないから」と、ビジネス部門から相談されず、抜け道を探される状況になることは避けるべきです。
「マーケティング部門は巨大なサイズの動画ファイルのダウンロードが多い」「動画ファイルは、そのサイズからしてマルウェアの可能性はない」「ダウンロードだけならリスクは少ない」と事前に把握していれば、個人向けクラウドストレージサービスを一律に禁止せず、そうしたアクセスだけをネットワーク上許可するといった、クラウドストレージサービスの導入計画を戦略的に立案できるようになります。
可視化をすることで、課題を見つけ出し、新しいアプローチで挑戦的に対処することで、社内の他部門との連携を強化すれば、人的なセキュリティリスクの低減にもつながります。
また、ビジネスでの利用を想定し、セキュリティや管理・運用の面を強化した法人向けのクラウドストレージサービスも充実してきています。
主な法人向けクラウドストレージサービス
セキュリティ・ビジネスの改善のためにも是非クラウドストレージの利用を
セキュリティだけではなく、企業や団体の垣根を越えた共同作業においても、クラウドストレージサービスの果たす役割はいっそう増すでしょう。企業間の垣根を越えた共同作業の重要性は、次のような市場の変化により高まっています。
- ビジネスのグローバル化
- オープンイノベーション
- モバイル端末の進化と働き方改革の普及
メールによるファイルの共有は、セキュリティ、ビジネス、両面から考えても制限する時期に来ています。是非、次世代のファイル共有として、クラウドストレージサービスの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
- 広瀬 努
- パロアルトネットワークス株式会社 セキュリティエヴァンジェリスト 外資系セキュリティベンダーにてIAM分野からコンテンツセキュリティまで、15年以上にわたりイベントでの講演、寄稿記事の執筆などセキュリティの啓発活動に従事。