本連載の前回「IT部門の人口ピラミッド問題にどう対処するか」では、IT部門の塩漬け人材の開放を訴えました。今回は、それを踏まえてIT組織強化のための人事ローテーションの重要性について述べます。
IT人材の噴水モデル
人口ピラミッド問題を解消するためにも、塩漬け人材を解き放つためにも、IT部門内のジョブ・ローテーションと、IT部門とビジネス部門の人事ローテーションが重要になります。
しかし、人員的にも時間的にも余裕のない現状を鑑みると、人事ローテーションを行うことは容易ではありません。特に、IT部門とビジネス部門の人事ローテーションについては、人事部門やビジネス部門との調整が必要となり、IT部門が単独で取り組める施策ではなく、全社的な課題として経営に対して提案しなければ一歩も進みません。
IT部門としても、高齢化や人口ピラミッドの歪みを長期的な視点で是正するために、困難を乗り越えて取り組まなければならない喫緊の課題といえます。
グローバルIT人材やビジネスとITの橋渡し役を果たす人材を育成するためには、そして、IT部門の人口ピラミッド問題を解消するためには、図1に示すようにIT部門のベテラン人材を積極的にビジネス部門、グループ会社および海外法人に輩出し、それと引き換えにそれらの組織から若手人材を受け入れるような人事ローテーションに、全社およびグループをあげて取り組むことが求められます。このような人事ローテーションの形態を「噴水モデル」と呼びます。
図1. IT部門における人事ローテーションの噴水モデル(出典:ITR)
昨今の経営者や事業部門からの期待を考えても、ビジネスのグローバル化を支えるグローバルIT人材、グループ経営を支える人材、ビジネスとITをつなぐ人材など、高度なIT人材が求められていますが、こうした人材の育成もままならないほどひっ迫した人員構成の企業も少なくないのが実態です。
一方で、本社のスリム化、間接部門人員の削減、アウトソース化などが推進され、IT部門の人員数自体が少なくなるなか、他部門からの転籍、中途採用や新卒者の採用も思うように進まず、技術の空洞化や機能不全が危惧されています。
40歳代や50歳代を中心とする少数のベテランスタッフに依存したIT組織運営の10年後に思いを巡らせて、危機意識をもつIT部門長は非常に多いのですが、一方でこの課題を認識している経営者や人事部門長は決して多いとはいえません。