世界の名だたるITベンダーが今、AI(人工知能)技術の研究開発および事業化に注力している。マイクロソフトもその1社だが、同社のAI技術は競合他社と比べてどうなのか。日本マイクロソフトで最高技術責任者(CTO)を務める榊原彰氏に聞いた。
3つのサービスで提供されるマイクロソフトのAI技術

日本マイクロソフト執行役員 最高技術責任者(CTO)の榊原彰氏
「マイクロソフトのAI技術への取り組みをもっと多くの人たちに知っていただきたい」―― 榊原氏はこう語って筆者の取材に応じた。「マイクロソフトのAI技術はまだまだ認知度が足りない」との強い問題意識があるという。
一方、筆者が榊原氏に聞きたかったのは、マイクロソフトのAI技術が競合他社と比べてどのレベルにあるのか、さらに同社ならではのAI技術の活用法をどのように考えているのかだ。ということで、今回の取材は、榊原氏にマイクロソフトのAI技術について語ってもらった。
まずは榊原氏の説明をもとに、マイクロソフトが現在クラウドサービス「Microsoft Azure」から提供しているAIサービスを紹介しておこう。
マイクロソフトのAIサービスは大きく分けて次の3つからなる。1つ目は、人間の知覚に相当する部分の機械学習サービスをAPIとして提供する「Cognitive Services」、2つ目は、機械学習のさまざまな要素技術を容易に組み合わせて新たなサービスを構築することができる「Azure Machine Learning」、3つ目は、上記2つのサービスを支える機械学習専用のコンピューティング環境「Cognitive Toolkit」である。
とりわけ、マイクロソフトのAI技術が今後、幅広く使われるようになるかどうかはCognitive Servicesの普及にかかっている。このサービスの内容は、「Vision(視覚)」「Speech(音声)」「Language(言語)」「Knowledge(知識)」「Search(検索)」の5つの領域において、図1に示した個々の技術のAPIを提供するものである。これにより、企業などでウェブサービスを開発するエンジニアは必要な技術をAPI経由で入手することができるようになる。

図1:Cognitive Servicesの概要(出典:日本マイクロソフトの資料)
ちなみに、マイクロソフトのAI技術といえば、Windows 10に搭載されたパーソナルアシスタントの「Cortana(コルタナ)」や、LINEチャットの相手をしてくれる“女子高生AI”チャットボットの「りんな」が一般ユーザーには知られているが、これらもCognitive Servicesの中から必要な要素技術を組み合わせて、同社がアプリケーションとして提供しているものである。