キリンビールは6月に、酒類の安定供給を実現するため、生産や供給計画を最適化する新ソフトウェアを本社と全国10拠点の工場に導入した。市場における競争激化を受け、酒類ラインアップを多様化させて消費者に新たな楽しみ方を提案する必要が出てきており、実現するための基盤とする。
現在展開中の商品はビール、発泡酒、チューハイなど150種類以上。従来は自社開発のシステムを使って製造における需給計画を立案していた。しかし、スケジュールサイクルが「旬ごと」となっていたことで、旬単位の生産計画をベースに、各工場が独自の判断で日別の生産計画を立て、手入力で各生産ラインに仕事を割り当てるといった作業が発生。その作業負荷の増大が課題になっていたという。
消費者ニーズの多様化に伴い、多品種少量生産への対応ニーズが高まっていることも背景にある。
こうした環境に対応するため、受給計画の初期段階から高精度な計画を立てる必要性を認識。計画サイクルを旬ではなく、週単位へと短縮化することを決めた。
新システムとして導入したのは「Infor Advanced Planning」と「Infor Advanced Scheduling」の2つ。受給計画の週次化を中心に、需要への速やかな対応や業務の効率化を図れると判断した。
問題となっていた、生産計画の工場への伝達業務を半自動化できることで、生産計画立案や変更の迅速化、工数の大幅削減を見込める。また、Inforのソフトウェアが酒類向けの専門機能を豊富に持ち、世界的に酒類メーカーへの導入実績が多かったことも採用の決め手になったという。
インフォアジャパンの代表取締役社長を務める新造宗三郎氏は、海外企業と話した際に「海外の酒類メーカーは日本企業ほど鮮度を求めていないことが分かった。だが、日本企業は鮮度を差別化要素にしている」と話し、鮮度へのこだわりが日本特有の要件であることに触れた。新造氏は、キリンビールでの導入について、工場で属人化していた業務を改善できたこと、BCPの面でも効果を見込めるとも指摘している。
キリンビールは今後、制約条件を標準化しながら、計画サイクルを週次からさらに、日単位へと進める意向を持っている。