日本マイクロソフトが11月1~2日に都内で開催したイベント「Microsoft Tech Summit」で、日本マイクロソフト エバンジェリスト 西脇資哲氏、日本マイクロソフトからLINEに転職した砂金信一郎氏、元AWSJ(アマゾン ウェブ サービス ジャパン)の小島英揮氏という、IT業界で著名な3人によるパネルディスカッションが行われた。「エバンジェリストが注目のこの人と語る ITキャリアの多様性と未来」と題した同パネルでは、3人がこれまで見てきた世界、そしてこれから作り上げる未来を語った。
左から、LINE ビジネスプラットフォーム事業室 戦略企画担当ディレクター 砂金信一郎氏(元日本マイクロソフト エバンジェリスト)、元アマゾン ウェブ サービス ジャパン マーケティング担当 小島英揮氏、日本マイクロソフト コーポレート戦略統括本部 エバンジェリスト 西脇資哲氏
いきなりですが、どうして辞めたの?
西脇氏 本セッションはパネルディスカッション形式で、クラウドを率いてきたゲストお2人を迎えます。進行台本は一切なく、スピーディに進めると同時に(ゲストと)親しい仲なので言葉が乱暴になるかも知れませんが、お許し下さい。さて、質問ですが、会社を辞めた理由を端的にお答え下さい(編集部注:小島氏は8月末にAWSJを退職、砂金氏は9月に日本マイクロソフトを退職している)。
小島氏 「時がきた」
西脇氏 格好いいですね。それはご自身?会社?IT業界?
小島氏 個人的な部分が大きいです。2年前だったら辞めることはなかったし、1年前なら分からない。自分がサポートする必要があると思っていましたが、もう大丈夫ではないかと。だから次のステージを探す時期がきたと判断しました。
「時がきた」
西脇氏 砂金さんは?
砂金氏 「りんな」。本当は“飽きた”と答えようと思いましたが、(小島さんと)かぶると思って。りんなの仕事をしていなかったら、MS(日本マイクロソフト)を辞めなかったかも知れません(編集部注:「りんな」はMicrosoftが提供する機械学習などを組み合われたチャットBOT)。気付きがあってクラウドの次はAI(人工知能)が世の中を変えるな、と。かつてクラウドで感じていた“ピリピリ感”がAIをディープラーニング(DL)に感じました。MSも大事なアルゴリズムやインフラを持っていますが、DLをやるときに大事なのはデータです。
西脇氏 いいことを言いますね(笑)。私は辞める予定はありませんが、やっぱり「若さ」を凄く感じます。今まで自分が手にしたことだけで仕事を進めることに限界を感じるようになりました。自分よりも若い世代の人が色んなものを持ち込んでほしいと思います。
「りんな」
クラウドの波が来る!と思った理由
西脇氏 では次に、“クラウドが来る!”と感じた理由をお聞かせ下さい。私は2009年にMSに移りましたが、その最大の理由が「クラウド来た!」だったのです。当時は日本オラクルに在籍していましたが、サーバを持って行かなくても、顧客先で同じデモンストレーションができるようになった。ちょうどAWSJでデモンストレーションを行った時はノートパソコン1台で済んだ。このときに“クラウドの時代が来たな”という、これまでとは違う感覚を味わいました。これが2008年の話です。
砂金氏 私のキャラクターを知っている方向けですが、「ニュータイプの勘」です。半分ネタですし、ロジックもありません。でも、皆さんエンジニアとして多くの経験をお持ちですが、仕事をしていると色々な言い訳をして、ロジックをこねくり回しませんか。結局、自分が直感的に“いいな”と感じたものに素直に従ったほうがよい結果となります。
西脇氏 それは自分がニュータイプだと言っているの?
砂金氏 もちろんです(一同爆笑)
西脇氏 自信満々ですね(笑)
砂金氏 でも、自信もキャリアの中で積み上げていくものだと思います。
西脇氏 同感です。私はそれをドローンで感じました。“来る”と思ったら全力で投じるのです。直感的に感じて、没入して、投資して、向かっていけるかが大事。
砂金氏 エバンジェリストの責任ですね。自分が注目する場所に全力投球するのは、人の心を動かす仕事で重要ですから。
「ニュータイプの勘」
西脇氏 では小島さんが“クラウドが来る!”と思った理由は。
小島氏 「本」です。『クラウド化する世界~ビジネスモデル構築の大転換』(Nicholas Carr著)を読みました。もちろん読む前からクラウドは知っていましたが、バズワード的にASAP的(可及的速やかに)なアプローチだと思っていました。この本には面白い話が書いてあって、サーバがクラウドへ移行する世界は、工場が皆自前の発電機を持って、周りのエコシステムがボロボロになり、パラダイムシフトが発生したとあります。そこが響きました。このままだと早晩に仕事がなくなるから、クラウドの胴元へ行かなければと。
西脇氏 あの頃は危機感がありましたよね。ちょうど小島さんとは(前職のオラクルを)辞めた時期が一緒で、お互いが同じときにクラウドの波を感じたのでしょうね。