ITは「ひみつ道具」の夢を見る

高度に発達した仮想世界は現実との区別がつかない--VRが紡いできた物語と希望

稲田豊史 2016年11月26日 07時00分

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「五感で知覚できるものが現実だというなら、それは脳による電気信号の解釈にすぎん」――映画『マトリックス』より、モーフィアスの言葉

 銃弾を避ける主人公ネオのえび反り、高速道路バトル、『ドラゴンボール』さながらの空中肉弾戦といった革新的なVFXばかりが記憶に残っているSF映画「マトリックス」三部作(99年、03年、03年)。しかしなかなかどうして、現実とは別に造られた世界(VR/Virtual Reality)に没頭することについての意味を、哲学的に問い詰めるのにうってつけの映画だった。

 『マトリックス』では、脳髄にコネクタを挿し込まれた人間が、知性と悪意を持ったコンピュータによって、赤ん坊の頃から「VR漬け」となっている。そして、その事実にほとんどの人間は気づかない。

 30~40代が90年代からさんざん聞かされてきたVirtual Realityの日本語訳「仮想現実」は誤訳である。正しくは「人工的に造られた現実」「現実世界と見かけは異なるが、本質的には等価といってよい現実」といったニュアンスが近い。それゆえ、高度に発達したVRは『マトリックス』同様、現実との区別がつかないのだ。


映画マトリックス

 VRは昔から、SF小説やSF映画、マンガやアニメでおなじみの題材だった。古いところでは、ウィリアム・ギブスンの小説『ニューロマンサー』(84年)。同作では電脳空間(サイバースペース)に意識ごと没入(ジャック・イン)して企業情報を盗み出すという描写がある。『マトリックス』が多くのインスピレーションを得たアニメーション映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(95年/監督:押井守)では、人の脳に直接ジャック・インして当人の記憶や行動を意のままに操る「電脳ハッカー」が登場。両作とも、人間が現実世界とは別に造られた世界に意識を置く――というVR概念の素地を描いていた。

 VRを「ゲーム」として登場させている作品も少なくない。マンガ『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博/98年〜連載中)に登場したゲームソフト『グリードアイランド』はMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)形式の没入型VRだった。アニメ化もされたライトノベル『ソードアート・オンライン』(川原礫/09年〜刊行中)に登場する同名ゲームも、「世界初のVRMMORPG」と謳われている。

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