実際、われわれはVRを「ゲーム」の形で手に触れる機会が多い。10月に発売された「PlayStation VR」は、頭をスッポリ覆って視覚と聴覚を没入させるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)。プレイに必要なPlayStation4本体とPlayStationCameraと合わせても、投資額は10万円以内に収まる。この功績は大きい。Oculus社からこの3月に発売されたHMD「Oculus Rift」や、スマホを使った簡易版の各種VR機器も、VRを身近なものとするのに一役買っている。
今年は国内のアミューズメント施設でも相次いでVRが導入された。2016年4月から10月まで、お台場「ダイバーシティ」内でバンダイナムコエンターテインメントが営業していた「VR ZONE Project i Can」は、1カ月前の予約開始後、瞬速で予約が埋まることで話題になった。
また、この10月には埼玉県越谷市のイオンレイクタウンに常設型の“VRアミューズメント”店舗「VR CENTER」が誕生。さらに「アドアーズ渋谷店」は12月16日に4階部分を改装し、「VR PARK TOKYO」をオープンする。
VRがゲームに利用されがちなのは、われわれが「現実よりも楽しい体験」をVRによって得たいからである。おなじみ『ドラえもん』に登場する「立ちユメぼう」【*1】は任意のユメが見られる道具。「実感帽」【*2】は出したいものの姿思い浮かべると、当人だけがそれを見て触れられる道具。いずれも頭にかぶる帽子形態、さながら超絶進化したHMDである。
現実的な技術面で注目すべきHMD体験型のVRとしては、東京大学大学院情報理工学系研究科の 廣瀬・谷川・鳴海研究室とユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが開発した 「無限回廊 – Unlimited Corridor」を挙げておきたい。
これは、HMDを装着して視聴するVR空間の映像をわずかに回転させることで、体験者は現実世界の同じ場所をグルグル回っているだけなのに、VR空間をどこまでも真っ直ぐ歩いていると感じる仕組み。狭苦しい空間なのに広大な空間と錯覚する――ここにはさまざまなエンタテイメントの可能性が感じられる。