キヤノンMJグループは、今年からスタートした5カ年の「長期経営構想フェーズIII」において、医療IT分野をITソリューション事業の重点領域に位置づけており、電子カルテや医療画像などの事業に加えて、医療クラウドの業容拡大により、デジタルヘルス基盤を構築。クラウドビジネスを展開する考えを示している。
キヤノンITSメディカル 第一事業部営業部 中村智生部長
キヤノンITSメディカル 第一事業部営業部・中村智生部長は、「医療IT分野は、5242億円の市場規模があり、キヤノンMJグループでは、電子カルテシステム、医事会計のほか、医画像ビジネス、ヘルスケアビジネスを対象に医療ソリューションを展開している。今回の製品は、医療従事者の業務負担を軽減し、カンファレンス業務の標準化が図れる。一人の患者への診療内容をより詳細に検討できる効果も期待できる」とした。
構内に専用のメディカルカンファレンスポータルサーバを設置。ブラウザベースでの利用が可能で、カンファレンスごとに抽出したデータをもとに、患者ごとのデータをリストから選択。画像を含む異なるフォーマットのデータも同時に表示できる。抽出する対象条件が同じであれば、2回目以降は自動抽出が可能になり、これもカンファレンスの準備時間の削減につながる。さらに、過去データの参照のほか、カルテに登録が可能な議事メモも各医師のデバイスから利用できる。
カルテに登録が可能な議事メモも各医師のデバイスから利用できる
カンファレンスデータの閲覧に関する制限設定も可能であり、セキュリティ面でも配慮している。
開発には、京都大学医学部附属病院医療情報企画部・黒田知宏教授が参加。同大学附属病院では、4月から先行する形で運用を開始。当初は4診療科で活用していたが、現在では6診療科で利用。糖尿病・内分泌・栄養内科では、これまで準備に18~20分かかっていた時間がなくなり、患者1人あたりの検討時間が、5分から8分に伸びたという結果が出ているという。
先行導入している京都大学医学部附属病院での成果
ソフトウェア価格は、300万円(税別)から。ターゲットとなるのは、400床以上の大規模病院や、200~399床までの中規模病院であり、2020年までに30施設への導入を予定している。
「これまでにカンファレンスに特化した形のシステムはなかった。大学病院を中心とした大規模病院、研修医や医療従事者の多い病院のほか、中規模病院においては、1次および2次救急の受け入れ病院、手術数および入退院の多い病院などが導入対象になる」(キヤノンITSメディカルの中村部長)とした。
将来的には、クラウド対応を図っていく考えを示したが、時期は未定としている。