課題解決のためのUI/UX

「デザインされた情報」の塊--地図から検討するUX

綾塚祐二

2016-11-28 07:00

 必要な情報を的確に(受け取りやすく、勘違いなどのないように)伝えるために、情報の提示の仕方などを設計することを「情報デザイン」と呼ぶ。UIやUXを設計する際の重要なポイントの一つであるその情報デザインが特に重要であり、「デザインされた情報」の塊と言えるものの一つが、地図や案内図の類である。

 前回の話と同じく、文化の違う地域からの旅行者のことなども考慮せねばならない場合もある。また、小規模なものであれば誰でも「デザイン」せねばならないことがあるであろう。そういった地図・案内図の類について考えたいが、これらについて議論すべきことは多いので、今回はその一部の話となる。

地図を見る目的

 まずは、地図や案内図を見る人が、何を目的としてそれを見るのかを考えよう。世界地図などのグローバルな地図を見るのと、駅前の案内板などのローカルな地図を見るのとでは自ずと目的は違う。より詳細に言うと、単純に全体を俯瞰したりその中から何かを探したり較べたりするために見る場合と、自分が今いるところ、あるいは自分がそこに行くと想定されるところ(とその周囲)を把握し、何かそこで行動をするために見る場合とでは、(共通する部分も多いが)必要とされることが大きく違う。

 ここでは、何かそこで行動をするための、ローカルな地図について考える。どこか見知らぬ・馴染みの薄い場所に、あるいはよく知っている場所でも何かイベントなどが実施され、一時的な出展物などが多数あるようなときに行って、そこに備え付けられた案内板、もしくは紙の冊子などで手元にある案内図を見る場面を思い浮かべていただきたい。そもそも行きたい場所が具体的に決まっていない場合もあるが、一つあるいは複数、行くべき場所が既にあるとしよう。

目的の場所を地図上で探す

 第一歩目となるのはもちろん、目的の場所を案内図の中に見つけることである。全体の規模が小さかったり目的となりうる場所の数が少なかったりすれば、「地図」部分でそのまま探すのも難しくないが、大きく・多くなってくると格段に難しくなる。そのため、「目的となりうるの場所」を並べたリストが地図のそばに必要になる。

 リストから目的の場所(に対応する名前など)を探し出すのが困難であってはほぼ無意味であるが、一般的に、名前の五十音順やアルファベット順で並べたり、カテゴリ分けして並べたり(あるいはそれらを併用したり)することで探しやすくすることができる。(利用者にとって)自然なカテゴリ分けができる場合は、積極的に利用すべきであろう。言うまでもなく、ここでは利用者から見た「見つけやすさ」が良いUXの鍵である。

 場合によっては、勘違いしやすい・紛らわしい名前の他の場所があるかもしれない。可能ならばそれらの名前自体からどうにかしたいところであるが、そうも言っていられないことが多いので、注意を促す、他の説明を加えるなどリストや地図上での工夫も必要である。

 例外的な状況として、覚え違いや、そもそも来るところを間違えていて、リストの中に目的地がない、ということも考えられる。「(存在するものを)見つける」のに較べて「存在しないことを確認する」のは格段に手間が掛かり、確信を持ちにくい。特に、リストの並び順やカテゴリ分け、名称の表記などに明確な規則性が感じられないようだと、劇的に難しくなる。

 よりよい情報デザインは、利用者のミスや勘違いによる悪いUXを(可能な限り)軽減することも考えるべきである。

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