マカフィーがサイバー脅威情報をセキュリティ業界で共有する取り組みを提案した。業界を挙げてサイバーセキュリティ対策に取り組む姿勢を示したものだが、果たして大きく広がる動きとなるか。
脅威情報の共有に向けた技術をオープン化
「増大するサイバー脅威に対抗していくためには、セキュリティ業界がもっと連携を強めていく必要がある」―― マカフィーの山野修社長は先ごろ、同社が開いた記者会見でこう呼びかけた。そのうえで、同社はセキュリティ業界の連携強化に向けた新たな取り組みを提案した。
記者会見に臨むマカフィーの山野修 代表取締役社長
新たな取り組みとは、これまでマカフィー社内およびパートナーエコシステム内においてやり取りしてきたサイバー脅威情報を、他のセキュリティベンダーやディベロッパーにも開放し、それぞれの製品開発などに役立ててもらうとともに、業界を挙げて新たな知見を生み出していこうというものだ。
具体的には、同社がこれまで脅威情報をやり取りする際に使用してきたプロトコル「Data Exchange Layer(DXL)」をオープンソース化し、「OpenDXL」として公開した。こうした取り組みは、セキュリティ業界では初めてという。
山野氏はこの取り組みについて、「セキュリティベンダーはこれまで個々に脅威情報を収集し、その量や速さを競ってきた。だが、脅威がますます増大する中でそうした競争を続けているのは、もはや時代遅れだ。これからは情報を共有して、業界を挙げて脅威に対抗していかないと、セキュリティそのものが立ち行かなくなる」との危機感が原点になっていることを語った。
まさしくセキュリティ業界をリードする1社であるマカフィーらしい取り組みともいえるが、同社にとってはどんなメリットがあるのか。脅威情報を公開すれば、自らの競争力を失うのではないか。この点について山野氏は、「この取り組みが多くの賛同を得て広がっていけば、OpenDXLが脅威情報を共有するためのプラットフォームになる。そうなれば、当社はセキュリティ業界のプラットフォーマーとしての役割を担いたい」と語った。
新生McAfeeの新ロゴに記された業界連携への思い
では、OpenDXLがプラットフォームになるという目算はあるのか。会見の質疑応答で聞いてみると、山野氏は次のように答えた。
「すでにパートナーエコシステムにおいて、150社を超えるパートナー企業と連携を進めている“Intel Security Innovation Alliance”や、さらに深い連携に向けてPalo Alto NetworksやSymantecなどの有力なセキュリティベンダーと協業を進めている“Cyber Threat Alliance”などを通じてDXLが活用されており、プラットフォームとしての下地はある。さらに当社はコンシューマビジネスにおいて、世界中で2億台ものPCにウイルス対策ソフトを提供しており、そこから得られる脅威情報がこの分野で世界最大級のビッグデータとなっている。これがプラットフォームとして非常に重要な価値となる」
とはいえ、OpenDXLにおける取り組みは始まったばかりなので、「大きく広がっていくとの手応えは十分にあるが、実際にどれだけの賛同を得られるかどうかはやってみないと分からない」(山野氏)とも。マカフィーにとっては大いなるチャレンジである。
ちなみに、マカフィーの親会社である米Intelは今年9月、かつてMcAfeeを買収して設けたセキュリティ事業部門のIntel Securityを2017年4月にも分社化し、社名をMcAfeeに戻すことを発表した。その新しいロゴには社名とともに「Together is Power.」と記されている。
新生McAfeeの新しいロゴ(出典:マカフィーの資料)
山野氏はこの点について、「まさしく業界一体となってサイバーセキュリティ対策を強力に押し進めていこうとの思いを込めた言葉だ」という。果たして新生McAfeeは、山野氏が言うように「セキュリティ業界のプラットフォーマー」になれるか。注目しておきたい。