今日のポイント
- 株価上昇が急だったこともあり、目先のスピード調整は想定の範囲。ただ、ドル高主導による円安傾向は、想定為替レンジの修正と企業業績の先行き改善見通しを促しそう
- 日経平均の予想PERは過去3年で14~17倍程度の範囲で推移してきた(現在は15.4倍)。米景況感改善と円安は、新年に向け予想PERを拡大させていく可能性がある
- レーガノミクス初年(1981年)に倣えば、Trump相場のいったんのピークは2017年央あたりか。当時の騰落率で試算すると、日経平均の上値目途として2万円超が視野に入る
これら3点について楽天証券経済研究所シニアグローバルストラテジストの香川睦氏の見解を紹介する。
米ドルの上昇トレンドが日経平均の堅調を支える
Trump相場で堅調が続いてきたドル円と日経平均だが、上昇ピッチが早かっただけに、利益確定売りによるスピード調整は想定の範囲内と考えられる。ただ、ドル円と日米金利差の推移を振り返ると、長期債も短期債も金利差は拡大傾向にあり、2015年8月にドル円が125円を付けた時点より水準を切り上げているのが分かる(図表1)。
Trump次期大統領による大規模減税とインフラ投資を主軸とした景気刺激効果や財政赤字の拡大をめぐる思惑や、米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げ観測などが米債金利(利回り)の上昇を促してきた。一方、日銀はイールドカーブコントロール(長短金利操作付き量的、質的緩和)策の一環として長期債利回りをゼロ%近辺に抑制する動きをみせている。当面の日米金利差が短期でも長期でも拡大トレンドであることに注目したい。
図表1:ドル円相場と日米金利差(2015年7月以降)

(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(11月24日)
主要6通貨に対する米ドルの総合的な為替変動を示す米ドル指数(DXY)は今週、2003年以来約13年ぶりとなる高水準となった(図表2)。
円だけでなく、政治経済面で相対的弱点を抱えるユーロや英ポンドに対し、米ドルが「強い通貨」として復活してきた動きを示している。米国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は改善基調にあり、12月14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げが実施されると、ドルがいったん売られる可能性があるが、その後は2017年以降の追加利上げも意識する動きとなりそうだ。
換言すれば、短期的な変動を挟みながら、ドル高が主導する円安傾向が日経平均の堅調持続を支えていくようにみえる。
図表2:米ドル指数(DXY)とドル円の長期推移

(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(11月24日)
業績見通しの改善と予想PERの拡大が見込まれる
投資家の関心は、「新年(2017年)も視野に入れた場合、株価に一段の上昇余地はあるのか」に注がれそうだ。過去3年程度の日経平均と予想PER(株価収益率)の推移を振り返ると、予想PERは大まかに14倍から17倍のレンジで推移してきたことが分かる(図表3)。
直近の日経平均ベースの予想EPS(1株あたり利益)は約1181円で、予想PERは約15.4倍となっている(22日現在:予想EPSはBloombergのデータ)。ただ、米国を中心に世界の景況感が改善を続け、為替の円安が続くなら、日経平均ベースの予想EPSは上方修正されていくと見込まれ、投資環境の改善(不透明感の後退)そのものがPERの拡大を促していくことが期待できる。
実際、2014年初や2015年春ごろに日経平均の予想PERが16倍から17倍まで拡大した実績を踏まえれば、日経平均が新年の上値目途として2万円超((EPS 1181円+増益率)×16~17倍))を視野に入れる展開となっても不思議ではない。
米大統領選挙前の記事(10月28日「大胆!2017年の日経平均シナリオ」)では、2017年のドル円見通し(中心レンジ)を「105~115円」(当時の実勢レートは104円台)と想定していたが、115円を上回る展開となれば、回帰分析から試算できる日経平均の上値目途も2万円超が視野に入ってくる。
図表3:日経平均の予想PER(株価収益率)レンジ

(出所)Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(11月24日)