スローな環境が伸ばす創造性--東京から70キロの「田舎」プロジェクト盛り上がる - (page 3)

中川生馬(バックパッカー)

2016-11-27 09:46

なぜ横瀬町はそこまでするのか?

 東京からたかだが70キロ圏内に位置する横瀬町だが、町の人口は毎年約100人減少、2040年には5000人を切ると推測し、更なる人口減少に歯止めをかけようと動き出した。

 “大都会”である東京の近隣の県にある町ですら、若者が離れている。

 芦ヶ久保駅から東京・池袋駅までは電車で約1時間半。都内の会社勤務であれば、通勤できる範囲の横瀬町。1時間半から2時間かけて通勤する人は少なくないだろう。が、若者は“憧れの大都会”東京へと流れるばかり。

 同じ悩みを持つ東京近隣の田舎町は少なくないはずだ。

 一方では、「大企業=世間一般的に良い企業と思われる会社に勤務しても生き甲斐はあるのだろうか…」と疑問を持ち、自分らしい暮らしができ、輝ける舞台を田舎へと探しに行く人たちも少なくない。

 東京のように多くの人で溢れていると、自身が培った技術やスキルは、その他多くの人のスキルと埋もれてしまい、生き甲斐を感じにくくなることもある。逆に人口が少ない田舎は“ないもの”だらけ。都会で培った自分のスキルを田舎で応用・利活用し、新たなものを創造することで、そのスキルが人目にとまり、一気に活躍の舞台で踊りだす人たちも多い。

横瀬

 また、田舎には、農業や漁業などの第1次産業、小さな商店や食堂での仕事しかないと思われがちだが、テクノロジーが飛躍的に進化し、今やどこにいても世界とつながることができ、あらゆる仕事が田舎でもできる。

 そんな背景も鑑みて「あなたの社会性あるプロジェクトやスキルを横瀬町で存分に生かしてください。私たちは一生懸命サポートしますよ」と声を掛けているのが、この横瀬町だ。

 富田能成町長は発表会で「横瀬町の課題は、全国の地方や町が抱える課題でもある。例えば、少子高齢化、在宅介護、教育現場など、横瀬町の課題は日本中の課題。それら課題の解決につながる“新しい実験”やスタートアップ事業は必ず他の地域でも応用が利く」と自信をもって話す。

横瀬
横瀬町はこのような企業や個人を誘致したい

 横瀬町で“実験”したプロジェクトや事業が、ほかの地域へ進出し採用され始めることで、横瀬町は、第1弾目の“実験”を同町で行ったことを全国的に認知することができる。

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 そして、新たな企業や個人が「社会性あるプロジェクトを軌道に乗せる、新規事業を行うなら、まずは横瀬町へ」と考え始め、横瀬町に拠点を構え始め、移住や定住につなげるなど、あらゆる波及効果へもつながる可能性も秘めている。

 横瀬町で事業を展開する企業や個人が町内で、買い物、宿泊、アパートや一軒家の賃貸などすれば、地元にお金が落ちる。

 外からの「新しい資源と活力」で「新しい事業アイディア」を常に生み出すサイクルをつくることで、町を元気づける。

 そのサイクルを繰り返すことで、町民は刺激を受け、近い将来、町民が新たなモノを生むことにも期待をかける。このようなサイクルや相乗効果を生み出すことが「よこらぼ」の大きな狙いだ。

 横瀬町は今回、民間企業の地方創生事業への参入、シェアエコの市場動向、横瀬町が内閣府地方創生加速化交付金 約2700万円を受けたことを機に、「よこらぼ」を開始した。Wi‐Fiを整備した旧・芦ヶ久保小学校「あしがくぼ笑楽校」を参加企業の共有スペースまたはオフィスとして活かす。

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2008年(平成20年)に廃校となった旧・芦ヶ久保小学校は芦ヶ久保駅から徒歩約5分

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