トップインタビュー

SAP Hybrisトップが語るマイクロサービス「YaaS」の日本展開

末岡洋子

2016-12-01 07:00

 「成果(アウトカム)ベースの経済がやってくる。ここでは技術革新が小さな単位で起こり、それを結びつけるプラットフォームが必要だ」――SAPのマイクロサービス戦略のカギを握るSAP Hybrisのプレジデント、Carsten Thoma氏の予言だ。

 19年前にコマースでスタートしたHybrisは、マーケティング、サービスと拡大、SAPによる買収後はSAPのフロントオフィス全体を受け持っている。SAPが11月初め、スペイン・バルセロナで開催した「SAP TechEd 2016 Barcelona」でThoma氏にフロントオフィスやマイクロサービスについて話を聞いた。

--Hybrisはコマースからスタートしてマーケティング、サービスなどに拡大してきた。現在のフォーカスは何になるのか?

Carsten Thoma氏
SAP Hybrisのプレジデント、Carsten Thoma氏。Hybrisを仲間と創業した共同創業者。来年創業20周年を迎えるが、創業時のメンバーが多く残っているそうだ

 フォーカスは顧客にある。創業当時(1997年)コマースはシングルチャネルの世界だったが、我々は創業2年目でオムニチャネルビジョンを打ち出していた。少し世の中の動きより早すぎたかもしれないが、その後オムニチャネルを進めるにあたってマーケティングの要素が必要になり、これを組み込んだ。顧客を特定したり、セグメントすることなくしてマルチチャネルの成功はないからだ。

 次に、サービスのエレメントが必要になった。オムニチャネル構造の中にサービスの要素がなければ、新しい世界で一貫性のある方法で顧客にサービスができないからだ。価値を提供するためには、顧客に継続して注意を払う必要がある。マーケティング、サービスなどを組み込むことで顧客とのエンゲージを強める顧客のライフサイクル管理が可能となった。

 このように事業を拡大する中で変わっていない点もある。Hybrisは創業時より業界中立型のソリューション提供を目指しており、BtoBでもBtoCでも利用できるという部分だ。顧客が使えるツールを目指し、最初の10年で3回もスクラッチからプラットフォームを書き直した。きちんと動くものを提供したかったからで、時間がかかったがその通りになって現在がある。これがイノベーションを生むことにつながった。

 間もなく創業20年になるが、技術が次々と移り変わる中で我々は常に新しい技術で自社を変革してきた。これは自信を持っている部分だ。

--SAPによる買収から2年、独立性を維持するために本社をドイツ・ミュンヘンに維持している。SAPとHybrisそれぞれの効果は?

 お互いに良い影響がある。クロスセルの機会が増えるなど、シナジーは両方にある。

 SAPがHybrisを買収した理由は、Hybrisが持つフロントオフィス製品がSAPにはなかったからだ。SAPは買収から1年の間に顧客関連の全製品をHybrisのポートフォリオに移した。全てを「SAP Hybris」というブランドにした。これはとてもスマートな動きだ。フロントオフィス分野では、Hybrisの方がSAPよりもブランド力があることを認めてのことだ。

 一方で、オムニチャネルなどとフロントオフィスが複雑になると、強いコアがあることが重要になる。オムニビジネスの管理では、設定という点でコアはとても大切だ。ここはSAPの本領で、SAPのインストールベースはわれわれに重要な競争優位をもたらしている。SAPシステムには大量のデータが保存されており、これによりフロントオフィスの顧客プロファイルを強化できる。

 SAPは歴史的にCIOにフォーカスしてきたが、今後はLOB(ライン・オブ・ビジネス)の重要性が高まってくる。ソフトウェアの部品化、最小化が進み、組織のトランスフォーメーションが進むと、小規模なサービスを購入する組織が増える。エンタープライズの構図が完全に変わるだろう。

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