日本株展望

トランプ当選だけが世界経済の見通しを明るくしたわけではない

ZDNet Japan Staff 2016年11月28日 11時02分

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今日のポイント

  1. トランプノミクスへの期待と、世界景気の回復を背景に世界的に株高が続いている。トランプ氏が大統領に就任する来年1月20日まで、トランプ歓迎相場が続く可能性がある
  2. 目先のイベント・リスクとして、12月4日のイタリア国民投票がある。改憲が否決されて、レンツィ首相が辞任し解散総選挙になると、イタリア政局に波乱が起きる。また、12月13-14日のFOMCで米利上げが実現するか否かも、重要イベントとなる

 これら2点について楽天証券経済研究所長兼チーフストラテジストの窪田真之氏の見解を紹介する。

トランプ・ラリーはいつまで続くか?

 トランプ氏の大統領当選で急に米景気および世界中で景気の先行きに強気の見通しが広がり、世界的な株高につながっていることにとまどっている投資家も多いようだ。トランプ当選だけで世界での景気の見通しが明るくなったとは考えていない。

 トランプ氏が大統領に当選する前から、世界経済に回復の兆しが出ており、そこにトランプ氏の経済政策(トランプノミクス)が伝わり、景気の回復が加速する期待が出たことが、世界的な株高の主因と考えられる。

 世界経済の回復をひととおり織り込み終わるまでは、日本および世界の株高は続くと考えられる。外国人投資家は、日本株を世界景気敏感株とみなしており、日本株への外国人の買いは、続くと考えられる。

 トランプ・ラリーが終了する時期の有力候補は、2017年の1月20日。つまり、トランプ氏が大統領に就任する時だ。世界および日本の株が、トランプノミクスのよいところを先に織り込んで大きく上昇してしまい、実際にトランプノミクスが始まる時には、株式市場はピークアウトするという考えだ。

 相場はなんでも先・先と織り込むもので、トランプ大統領の登場前に、期待を先に織り込んでしまうことは大いにあり得ることだ。もし、日経平均がその頃、2万円に近づいていれば、そこでトランプ・ラリーは一旦織り込み済みとなる可能性が高まる。

 トランプ氏の言葉だけに反応して、株式市場に期待が広がっているが、実際に大統領になれば、実現不可能な口約束が多かったことに、株式市場がだんだん気づいていくことも考えられる。来年1月20日は、要注意の日程として頭に入れておきたい。

 トランプノミクスのいいところばかりを見て、世界的にトランプ・ラリーが続いていることに、危うさを感じる投資家もいる。日本株では、外国人投資家の買いが続く中、個人投資家は売りが増えている。信用取引で空売りを増やす個人投資家もいる。いつまでも上昇する相場もないわけで、いずれトランプ・ラリーの問題が表面化してくるとの思惑で空売りを仕掛けていると考えられる。今、空売りをしかけるのはリスクが高い。

 世界景気の回復を、世界の株式市場がひととおり織り込むまで、日本株の上昇が続く可能性があるからだ。

トランプノミクスの問題は、米景気を過熱させる可能性があること

 米景気は、トランプ当選前から持ち直しつつあった。シェールガス・オイル革命によって安価な自国産エネルギーを得た恩恵が続いている。米景気回復を映して、去年12月に続き、今年の12月も利上げが実行される可能性が高まっている。

 米景気は放っておいても回復局面にあったわけで、ここで財政悪化につながる大型の財政出動を行うのは異例と言える。トランプ次期大統領は、ここから減税と大型公共投資の両方を実行する方針だ。

 米国では、景気拡大が続いているにもかかわらず、低所得者層の不満は蓄積していた。資本家や大企業ばかりが恩恵を受け、貧富の差が拡大していることに不満がたまっていたわけだ。

 トランプ氏は、低所得者層の不満の受け皿となることで、当選を果たした。低所得者層を喜ばせるために、ここからでも、さらに大型の景気対策を打って、雇用拡大をはかろうとしている。好景気下で大型の景気対策を行うのは、究極のポピュリズム(大衆迎合)政策だ。本当に大型景気対策を実行すれば、一時的に米景気が過熱リスクを意識した方がいいだろう。

 ちなみに、大統領選に敗れたヒラリー・クリントン氏も、大型の公共投資を実行する方針は表明していた。どちらが当選しても、米景気の回復が後押しされるのは同じだったかもしれない。

 ただし、クリントン氏は、富裕者層の増税を実施することを表明していた。それに対し、トランプ氏は、減税を表明していた。それで、富裕者層の票も、かなりトランプ氏に流れたと考えられる。ポピュリズム政策を徹底したトランプ氏が勝利した背景がそこにあると考えられる。

 米景気過熱リスクが高まったことにより、ドル高(円安)が急伸した。その恩恵で、これから、今期(2017年3月期)の日本の企業業績モメンタムは強くなってくる見通しだ。いろいろ問題のあるトランプノミクスだが、日本株に対しては、強い追い風になった。今は、その追い風に素直に乗っていく戦略が有効と考えられる。

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