フリーミアムモデル
コミュニティーエディションというビジネスモデルと共通点のあるものとしてフリーミアムモデルがある。これは、「プロフェッショナル版」へのアップグレードパスを用意したダウンロード可能な無償の製品から、無償のコア機能とともに有償のアドオンを提供する製品まで、さらにはベンダーがホスティングや保守管理を行うSaaS版まで多岐にわたっている。
Odooは、これらのアプローチを組み合わせている企業の1つだ。同社はかつて、OpenERPという名前だった。Odooはダウンロード可能な無償の「Community」エディション(ユーザーのサーバにインストールできる)のほか、有償の「Enterprise」エディション(これもユーザーのサーバにインストールできる)、「Online」エディション(月単位での利用が可能)を提供している。
Odooはこの戦略により、製品を無償で使用する代わりにその開発に貢献したいと思っているユーザーや、自らのサーバ上で運用したいと考えているがサポートサービスを追加で求めているユーザー、とにかくSaaSソリューションを使いたいというユーザーのすべてにリーチできるというわけだ。
Red Hatや、驚くほど普及している「Ubuntu Linux」ディストリビューションを開発しているCanonicalといったLinux企業も、専門的なサポートサービスで多くの収入を得ている。ソフトウェア販売の収入は1度だけ(加えて数回のアップグレード)である一方、専門的なサービスは継続的な収入源となる点が重要だ。MicrosoftやAdobe Systemsといった企業もサブスクリプションという形態に向かっているのはこのような理由が大きいと考えられる。この種の収入は極めて収益性が高いのだ。
アドオンビジネス
オープンソース企業が収入を得るもう1つの方法として、アドオンビジネスを挙げることができる。アドオンビジネスで最も成功している企業の1つがWooCommerceだ。2015年に同社がAutomatticに買収された時点で、同社の製品はEコマースストアの25%強で採用されていた。同社の基本となる製品は、「WordPress」(これ自体が、いくつかの商用コンポーネントを伴うオープンソースプロジェクトとなっている)用のプラグインであり、ダウンロードは無償だった。しかし、オンラインストア向けの基本製品に追加するさまざまなアドオンの販売によって、WooThemes(WooCommerceの親会社)は収益を得ていたのだ。
アドオンビジネスは、モバイル向けのアプリストア経由で収益を得ているほとんどすべてのアプリで採用されているビジネスモデルだ。大半のアプリはオープンソースではないものの、基本となるアプリを無償でダウンロードでき、アプリ内販売で収益を生み出している。一部のアプリ内販売、特に有名なスマートフォン向けゲームでどれだけの収益が生み出されているのかを見れば、これが優れた収益モデルだと分かるはずだ。
またWooCommerceからは、オープンソースプロジェクトが収益を生み出すもう1つの方法が見えてくる。大規模なユーザーベースを作り出せば、価値がついてくるのだ。Automatticはその価値を評価した結果、3000万ドルとされる資金を投じ、WooCommerceとその従業員55人を獲得した。