もちろん、広告だけでなくあらゆる創造産業は人間のセンスやスキル、勘、経験値といったものをはるかに超越した異次元の予測産業となっていく。そのとき問題となっていくのは、AIなどによって導き出された予測をいかにプライベートなメディアを通してユーザーの日常にそっと滑り込ませるかどうかだけである。
「ビッグ・ブラザー」の力は増すばかり
すでに今現在、「私が次に知りたいコト」は私たち以上にGoogleが知っており、「私が次に欲しいモノ」は私たち以上にAmazonが知っており。「私が次につながりたいヒト」は私たち以上にFacebookが知っている…。
ありきたりの陰謀史観ではないけれども、実際、私たちにまつわるあらゆる「情報」はインターネットを通してクラウドという名の「閻魔帳」に時々刻々と記録されている。このとき、私たちの「Margins of freedom(自由の余剰)」がどれほど残されているのか……。いま一度じっくり対峙してみる価値のある問題と言えるだろう。
前回も書いたことではあるが、自分が単独で思考したことなのか、そう思考されるように誘導されたことなのか、見極めがつかない世界に私たちは住んでいる。
<後編に続く>- 高橋幸治
- 編集者。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年まで「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに編集長/クリエイティブディレクター/メディアプロデューサーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。「エディターシップの可能性」を探求するミーティングメディア「Editors' Lounge」主宰。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部にて非常勤講師もつとめる。