すでにマスメディアという目の粗い網(=ネット)ではどうしてもすくい取れない、インターネットというきめ細やかな網(=ネット)でしかすくい取れないものが確実にある。
では、私たち人間がソーシャルメディアのタイムラインやニュースフィードに張り付いていればいいのか言えばなおさらそんなことはなく、私たちが自分で編集したタイムラインやニュースフィードなど、結局のところ、多様性を斟酌して公平なキュレーションをしたつもりになっていても、自分の理解の範疇に収まる想定内のコメントの羅列を超えることはない。
ここに人間にとって捨象し難い「願望」を差し挟まない人工知能による予測産業の優位性がある。
インターネット第2四半世紀には問題の定立軸が変更を迫られる
前編の冒頭で言及した国際会議「TACIT FUTURE(暗黙の未来)」に再び戻るが、筆者の中では今回のカンファレンスへの参加と本連載のタイトルである「Rethink Internet:インターネット再考」という問題意識はかなり密接にリンクしている。
10月27日から29日までの3日間、ドイツのベルリンで開催された国際会議「TACIT FUTURE」のWebページ。各ワークショップの成果やゲストのインタビュー動画、パブリックトークのオーディオファイルなどが公開されている
連載開始時から再三述べてきたインターネット第2四半期では、人間と情報、社会と情報、そして社会と人間の関係を考察する際の問題の定立の仕方自体の変更を迫られることがしばしば生起してくるだろう。
上述した「Brexit」にしても先の大統領選挙にしても、保守vs.革新といったこれまでの政治的な対立軸のほかに、都市vs.地方という地域的な対立軸が明らかに前景化している(「Brexit」の場合はイングランドにおけるロンドンとそれ以外という構図のほかに、イングランドとそれ以外という図式もあるが……)。