VR技術を受刑者の社会復帰訓練に応用--米国で取り組み

Tas Bindi (Special to ZDNet.com) 翻訳校正: 石橋啓一郎 2016年12月01日 06時00分

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 仮想現実(VR)技術には、人間の感覚を刺激し、別の現実に運んでくれる力があり、最近注目を集めている。この技術の価値はエンターテインメント分野以外でも認知されつつあり、教育界や不動産業界などさまざまな業界に浸透しようとしているが、ニューヨークのスタートアップVirtual Rehabは、VRを受刑者の社会復帰訓練に応用しようとしている。

 同社の創立者であり最高経営責任者(CEO)の起業家、Raji Wahidy博士は、VRには受刑者の社会復帰訓練と教育を行う力があり、究極的には、受刑者が釈放後によりよい生活を送る準備を調え、再犯と再収監を減らし、納税者の負担を減らすことができると強く信じている。Virtual Rehabは、この信念の下に設立された。

 同社はVR技術を使い、性犯罪者や家庭内暴力の加害者、その他の受刑者に対して、実用的な職業訓練とともに、矯正サービスと社会復帰訓練プログラムを提供することを目指している。

 Wahidy氏は米ZDNetに対して、Virtual Rehabの技術は、仮想世界に対するインターフェースのメタファーとして、プレゼンスのシミュレーションを用いることで、受刑者がコンピュータが生成した世界で、自動車のバッテリ交換などの現実的な作業を行うことを可能にしていると述べている。同社は触覚フィードバックの技術を利用して、体験をより現実的に感じられるようにしている。例えば、仮想世界で自動車のエンジンを切った後、十分に冷める前にバッテリを交換しようとした場合、軽い電撃を感じるようになっている。

 Wahidy氏によれば、重要なのは、仮想環境で得たスキルが現実世界に直接応用可能であることだ。

 Virtual Rehabはまた、現実世界で起こり得る、人同士が対立している状況に対する受刑者の反応をテストし、結果に応じて点数をつけている。

 「受刑者は、夫婦喧嘩や恋人同士の喧嘩など、現実の生活で起きる可能性のある状況に置かれる。その後、受刑者がどう反応するかを監視し、状況を解決するために適切な行動を取れるかどうかを調べる」とWahidy氏は述べている。同氏は以前、Vodafoneの業務担当バイスプレジデントを務めていたこともある。

 「この場合適切な行動は、2人の間に入って距離を取らせることだ。そうしたくない場合は、警察に連絡して助けを呼ぶことが望ましい」

 Wahidy氏は、間違いから学ばない受刑者も出てくると認めているが、学ぶことができる人の割合の方が高いはずだと主張している。

 「多くの受刑者は心から社会に復帰したがっている。彼らを死ぬまで犯罪者扱いして、働いたり、働くための能力やスキルを身につけるのを妨げるよりも、手助けすべきだ」と同氏は言う。

 「もし受刑者を訓練せず、刑務所を罰を与えるだけの場所にしても、何の役にも立たない」

 Institute of Criminal Policy Researchの統計によれば、現在の世界の在監者数は約1050万人であり、このうち米国の在監者は220万人で首位を占め、中国がそれに続く160万人となっている。

 米国政府は2016~17会計年度に、刑務所と拘置所に88億ドルの予算を割り当てている。Virtual Rehabは、世界的に見た場合、同会計年度中に352億ドルが刑務所と拘置所に投じられると推計している。

 Wahidy氏は、米国立司法省研究所の統計を引用しながら、釈放された犯罪者の3分の2が3年以内に再び収監され、75%が5年以内に戻ってくると語った。このことが、米国の刑務所が混雑している要因になっている。

 「現在の取り組みがどういったものであれ、それはうまくいっていない」とWahidy氏は言う。「誰しも良いところを持っている。その小さな美点を大きく育むのか、刑務所を受刑者を罰することに使って事態を悪化させるかはわたしたち次第だ」

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