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農業 × IoTが導く世界

農業ITの実情とこれから - (page 2)

山口典男(PSソリューションズ)

2016-12-06 07:00

 さて話を戻そう。実際に園芸施設(いわゆるビニールハウスのようなもの)にカメラを設置したあるプロジェクトでは、IT側の人間は良かれと思ってハウス内が見渡せる高い位置に苦労してカメラを設置する。一方、農業生産者は苦労してそれを外し、自分のビニールハウスで栽培中の作物の葉の下側の結露を見たいと思って設置場所を変えた。ウェブカメラの動作を確認するために同カメラから伝送された画像データを見たIT関係者は言うのだ。

 「せっかくハウス全体を見渡して生育を俯瞰できるように設置したのになぜ位置を変えるんだろう。これでは葉っぱの裏しか映らないじゃないか。やはり農業分野はIT化が遅れている」こんな悲劇が日本中で繰り広げられていた。農業界のITリテラシの低さを指摘する人たちの農業リテラシーも相当に低いのだ。何度も書くが私も書いていて胸が痛い。

 半導体もソフトウェアも人間が作ったものだ。エレクトロニクス、IT業界は人類自ら作り出した物事の上での商売だ。一方、植物は人間が科学だとか哲学だとか言い出す前から地球上に存在し、地球の一部として共存していた。農業は自然科学の対象であり、工業よりむしろ医学に近い。

 最新の医学を以てしても不治の病がまだ存在する昨今、人間自身の病すら治せない今の自然科学で、農業、自然を牛耳ろうとは思い上がりも甚だしい。外科手術を受けた時にその切開した傷が治る原理までは医者は気にしないだろう。手術後の切開跡の傷は「自然に」治るからで、特別何かをしたから治るとかしなかったから治らない、というものではない。

 それと同様に、みかんもリンゴもなぜか生きていて実をつけてくれる。土壌微生物と共存関係を保ちながら本当の所人間が今一つわかっていない原理で生きている。それを外部から人間が交配したり時に遺伝子操作したり栽培技術を駆使して人間に都合が良いように仕向け、それが今の私たちの食文化を支えている。昨今どこでもあるバナナはものすごく品種改良された上であれほど食べやすく美味しくついでに種なしになっていることに改めて感動するべきなのである。

 そのような混乱した状況の中で、農業はどのように進むのだろうか。過去30年間を見ると日本は農業従事者が減少し、生産高も減少してきた。一方、同じ時期欧州では農業従事者は減少したが生産高は上がっている。すなわち、農業という産業が構造化され産業化された結果が見て取れる。昨今日本の農業生産人口が減少したことを問題視する傾向があるが、本質的には減少が問題なのではなく、減少している理由が問題なのだ。

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