SIerの経営者の方と会食したりするとしばしば、次のような話を聞きます。「うちは受託開発を長くやってきたので、社員は言われたことはやれるんだけど、それ以上のことはできない」と。現場の方が言われたことしかできず、会社自体の競争力が落ちているということは、経営者が間違っているということです。「言われたことをやれる」のはすごい能力なのに、会社の競争力が落ちているということは、経営者の言っていることが間違っているということになります。経営者は「うちの社員は言われたことしかできなくて、本当に悩んでる」とか言うけど、それは明らかに間違いです。
言われたことができるというのは能力が高いのだから、言うことさえ間違えなければいい。そこでは、イノベーションの方向性をちゃんと示せばいい。内製化するにあたって技術力を磨き、高レベルかつ美しいものをつくれるようにする。なおかつ今の技術的な流れを読んだうえで、方向性をきちんと示す。本で読んだことをそのまま言うのではなくて、自分自身が手を動かしてつくり、本質を理解したうえで技術的な方向性を提示していく。経営者がそうあるべきです。

クリエーションライン 代表 取締役社長、安田忠弘氏
安田氏:われわれは今、DevOpsに取り組んでいます。実際にDevOpsで何を実現するか。ユーザーさんが何を求めているのかということをつめていくと、業務改善だったりする。そこをスタート地点として、バリューストリームマップ(業務の工程と経路のプロセス図を示す手法)で業務フローを見直す。そのあと顧客と一緒に、実際にどこを改善すべきかを見つめ直していく。そういう手法でやっています。
うちは今、それを自社内でやってみようとしています。総務・広報チームにもバリューストリームマッピングを適用させ、業務改善をやっていく。そうすると意外といろんな問題点が出てくるから、改善できるし、結果的にそれをお客さんにフィードバックすることもできる。うちが今取り組んでいるのは、いわゆるドッグ・フーディング(自分で開発したシステム、サービスを利用する)ですね。自分たちでちゃんと食べ、飲み込んで消化したうえでユーザーに提供していく。当たり前のことですけど、地道に続けています。
DevOpsをやるうえで重要なことは、業務を改善していくプロセスを可視化をすることです。それをやらないと、いきなり「DevOpsやります。じゃあツール入れて」「はい、DevOpsできました」ということになるわけはない。以前は「Chefを入れたら、業務がすごく改善する」って言ってたのですが、実際にはそれで業務が改善する割合はほんの少しです。