林氏:先ほど小野さんが言われたモード1、モード2、あるいはSoE(Systems of Engagement/人との関係を構築するためのシステム)、SoR(Systems of Record/記録のためのシステム)というのがありますね。うちの場合はトラディショナルICT、クラウドネイティブICTと言っています。要は、これからどんどんモード1が減っていく。こういう常駐型のモデルが減っていく一方で、IoTやビッグデータなどモード2系が伸びていく。今はちょうど過渡期に来ていて、それに対応したインテグレーションがあると思うんです。こちらのレガシー系のシステム(モード1)を押さえつつ、モード2のところで冒険していく。そうやってバランスを取りながら、インテグレーションを展開していくことが重要かなと思っています。
NTTコミュニケーションズ エバンジェリスト 林雅之氏
あるいは、今のインテグレーションにはオンプレミスかパブリックかという選択肢があると思います。われわれはベアメタルを出してから、ベアメタル上でインテグレーションしていきたいという案件が増えています。今まではイノベーター的なユーザーがほとんどだったんですが、最近ではアーリー・アダプターよりもレイト・マジョリティーの顧客が増えてきた。そういう顧客がいきなりオンプレからパブリックにするのは難しいので、ホステッド・プライベート・クラウドにする。ベアメタル上で今までのオンプレをクラウドに持っていくけど、物理サーバで構築する。うちはパブリックそのものよりもホステッド・プライベート、つまりパートナーと連携し、ベアメタル上のインテグレーションを支援するというモデルにシフトしつつあります。そういうニーズが非常に増えてきているので、そういうインテグレーションのサポートに対応できるモデルが非常に重要だと思っています。
もちろん工数積算に関する議論もしています。弊社はもともと通信事業者・サービス事業者なので、インテグレーションをやっていてもあまり失うものはない。だから、逆に冒険しやすいかなと思います。ただ、公共案件ではけっこう常駐モデルをやったりしてます。
和田氏:アバナードは半分、工数積算をやってます。アクセンチュアと一緒にやってるのは、実家の手伝いをしてバイト代をもらってるようで、楽ちんな部分もあります。でも、アクセンチュアのプロジェクトをやってるわれわれのエンジニアには「こういうことをやりに来たんじゃない」という人もけっこういる。そこが大きな悩みになっています。
われわれには2つの転換点がありました。アバナードができた当初は、ベンチャーに近かった。当時は「日本のマーケットはしょせんPCでしょ」という感じだったから、マイクロソフトで大企業向けに業務システムをつくるビジネス自体にリアリティがなかったんですが、2003年ぐらいから少しずつ動き出した。Windows 2000が出たことによって初めて、企業システムの構築が可能となったわけです。それから2~3年で作り手側が「うちのにUNIXをぜひ」と売り込む状況から、顧客側が「それでは高いので、何とかなりませんか」という状況に変わった。最初のうちは競争相手がいなくて、われわれみたいに「マイクロソフトで本気で見積もり、本気でつくりあげますよ」と断言した会社はそんなになかった。そこがうちのスタートですね。
その次は投資です。われわれの会社は規模を大きくすることで、割合は変わらないけど投資の金額を大きくするという選択をした。ですから当初は15人でスタートしたのですが、10年目でエンジニアが320~330人になっています。ボリュームを大きくし、国内での投資を引き出すというアプローチに出たんです。業務コンサルのような相談からスタートしてものをつくり、インフラの部分もワンパッケージで提示する。そういう新しめのモデルをつくり、顧客に提供していく。