小野氏:何より大切なのは「新規事業をやるのはベンチャーを始めるのと同じだ」ということを認識することです。われわれは新規事業を検討するチームが各事業部にあるのですが、そこではだいたいエビデンスで固められたモノが出てくる。
たとえば「ここがこう言ってるから、今後このマーケットはこのスピードで拡大していくだろう」とか。好きだから、楽しそうだからやるのではなく、言われたからつくる新規事業というのは本当に最悪で、力のないアイデアしか出てこない。
セゾン情報システムズ常務取締役 最高技術責任者(CTO)小野和俊氏
新規事業をやる場合、着眼点のセンスが大事です。そして反応を見ながら、必要に応じてピボットするような機動性も必要です。さらにはやりきる実行力・責任感も必要だし、チームメンバーとのコミュニケーション能力も必要です。
まず「こういう製品が世の中にあったらすごく魅力的だと思うし、身内にも売って回りたいから作れせてほしい」と考え、情熱を持って取り組もうとするメンバーがいることです。信頼の積み重ねから「こいつだったら任せられるかな」と思った人に「じゃあやれよ」とゴーサインを出す。これはほとんどベンチャーの立ち上げみたいなものですから、うまくいく可能性があると思うんです。
でも、SIの中で「新規事業をやれ」と言われてうまくいったケースは皆無に等しいんじゃないですか。単に急ごしらえでチームをつくったのではうまくいかなくて、ほとんど全滅します。たぶん1万のうちの1も成功しない。だってそういう人には、全然力がないから。特徴がないことが特徴みたいなタイプの人たちが集まって議論すると、たいてい机上の空論みたいになる。「3年後のビジョン」とかドキュメントはやたらと厚いんだけど、中身はスカスカです(笑)
ですからここでは能力が高い人よりも、情熱のある人にやらせたほうがいい。あるいは外部からベンチャーを立ち上げた人を入れてロールモデルにして、「こうやればうまくいくんだ。こういうふうにやろう」と方向づける。そこで情熱が芽生えて、手を挙げる人が出てくるかもしれない。これならうまくいくと思うんです。
そもそも新規事業は難しいし、アサインされたらできるわけでもない。なおかつ社内で後ろ指さされながらやるわけですから三重苦で、成功する可能性はほとんどない。もちろん、だから絶望的だと言っているわけじゃない。うちでは新規事業に取り組んでますけど、そういう難易度・特性を認識しながらやらないと、まずうまくいかないだろうと思います。
後藤氏:SIerに「古くからある大企業の」という枕詞が付くんだったら、どう考えても無理ですよね(笑)。あとは体質を変えるしかないです。