座談会@ZDNet

「デジタル化」で顧客の期待を超えるために--次世代SIer座談会(4)

山田竜司 (編集部) 小船井健一郎

2017-02-17 07:00

 次世代SIerに必要なことをテーマに識者が語る。今回は4回目(第1回)、(第2回)、(第3回)。参加者は以下の6人。

参加者

  • NTTコミュニケーションズ エバンジェリスト 林雅之氏
  • セゾン情報システムズ常務取締役 最高技術責任者(CTO)小野和俊氏
  • クリエーションライン 代表 取締役社長、安田忠弘氏
  • アイレット(クラウドパック) 執行役員 エバンジェリスト 後藤和貴氏
  • アバナード ケイパビリティ・デベロップメント・ディレクター 和田玄氏
  • 司会 ZDNet編集部 山田竜司

デジタル化にSIerはどう対応するか

――「デジタル化という言葉」をあらゆるベンダーが使っていますが、SIerとしてどのように対応していますか。

 小野氏:これはけっこう大事なポイントですね。まず、顧客がSIerに求めるものは何か。今は単純に「言われたものをつくってね」というのではなく、すごくいろいろなものが出てきて変化している。第3のプラットフォームとかデジタルビジネスとかいろいろ言い方はありますけど、それによって自分たちの事業の何が変わり、どう役に立つのか。顧客側が、そういうことをイメージしきれていないケースが多いです。


クリエーションライン 代表 取締役社長、安田忠弘氏

 SIerは本来ITの専門家でしょう。ITの専門家で、少なくとも技術面では知り尽くしている人たちが「この技術をあなたたちの事業のここに適応させたら、すごくいいですよ」とアドバイスをする。

 顧客は、そういう事業戦略・技術戦略が生まれるような対話をしたがっていると思います。「この人と話してると、自分たちの事業がよくなるな」と思えるような提案を持ってきてほしい。

 今までのように人月単価で「安くします」と言うのではなくて、技術についてちゃんと肌で理解したうえで「ここで行けるんじゃないですかね」とか、コンサル的な提案ができないと厳しいんじゃないかなと。

 かといって、本を読んで勉強してもそういう感覚は身につかない。今の世の中の技術って、触ればわかるやつが多いんですよ。スマホとかでチャチャッとアプリをダウンロードして、使ってみたらわかる。そういうのが多いじゃないですか。最近社内で「おおっ」となったのはビットコインです。

 小野氏 ビットコインはフィンテックの中にあるけど、これってうちみたいにカードシステムをやってる会社と関係があるでしょう。でも全社総会で「ビットコインで決済したことがある人っている」って聞いたら、ほとんどいなかった。これはまずいということでその翌週、取締役・監査役・社長とか事業部長以上を全部集めて、ビットコインを体験する会みたいなのを開いた。

 みんなでウォレットをインストールして、ビットコインを少しずつ配る。そうしたら「おお、来た」とか言って、そんなに興奮しなくてもいいのに(笑)。でも、すごく楽しいですよ。


セゾン情報システムズ常務取締役 最高技術責任者(CTO)小野和俊氏

 とにかく、体験してみることはすごく大事です。触ってみると、やっぱりワクワクするんですよね。私もそうですけど、ITの会社に来た人はみんな、どこかでワクワクしてきたはずです。「技術で何かすごいことが起こりそうだな」とか「プログラムって原材料が要らないし、何もないところから何かをつくるなんてすごいな」とか、そういう希望があったはずなんです。

 「IT業界は3K(きつい、厳しい、帰れない)」とかネガティヴなことを言われる中で、ただ言われたことをやるとかミニマムな思考になってきているんだけど、体験するとまた楽しくなるんですよね。体験すればわかることも多いので、そういう機会をちゃんとつくる。

 お客さんだって提案された時「ブロックチェーンはこうで」とか説明されるよりも、「実は先週、うちの会社では全員これをやったんですよ。そうしたらすごくワクワクして。何なら今、10分ぐらいでできるんでやってみませんか」と言われたほうが興味を持つ。そのようにしてもともとの技術に立ち返り、自分たちが身をもって体験し、楽しむということをきちんとやっていく。

 これは簡単なことだけど、やってみればいい方向につながっていくんじゃないですかね。特に上のほうの人たちは、新しい技術を積極的に体験していくべきです。一番上の人たちと一番若い人たちの両方が体験すれば、間の人たちは自然に「まずい」と思いますよね。そうすると、IT業界全体が楽しい感じになると思うのです。

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