さらに沼本氏は、Azure上のSaaSとCortana Intelligenceを組み合わせる「Dynamics 365 for Customer Insights」を利用することで、より顧客と良好な関係を構築できると説明した。英国で1700店以上のパブを経営するMARSTON'Sでは、「天候や食材注文数など多くのデータを組み合わせることで、(同店舗のマネージャーは)ドリンクや料理の提供スピードよりも、無線LANアクセスポイントの強化など優先すべき課題に気付いた」という。

クレーム対応やソーシャル情報などビジネス使えるデータを活用する「Dynamics 365 for Customer Insights」。画面は支配人ベースの画面だが、マネージャーやウェイター(ウェイトレス)ベースのコンテンツも用意する
最後のAdaptableは、既存のIT環境との整合性や順応性を意味する。ここでは、カスタムビジネスアプリケーションを簡単に構築できる「Microsoft PowerApps」や、プロセスとタスクを自動化する「Microsoft Flow」との連携をアピールした。「開発言語を用いたコーディングを行わずに複数のシステムをつなぎ合わせて、例えばリード(見込み客)が入ったらトリガーを発するなど、どのような業務システムとも連携できる」

「Microsoft Flow」のデモンストレーションでは、条件やアクション、連携するシステムを選択し、予兆保全アプリケーションを作成した
沼本氏は、記者との質疑応答の場で「既にCRM&ERPを導入している企業に対して、Dynamics 365にすべて入れ替える提案をすることは難しいと考えている。既存システムと組み合わせて使っていただくことを重視している」と述べている。競合製品との差別化については、「水平的なクラウドプラットフォームを目指している。孤島のように存在するのではなく、横の連動やデータ連携を実現できるのがAzureやDynamics 365の強み」「各国にリージョンがあるAzureなら、ターゲット市場に即して自由に(Dynamics 365を)展開できる。このサービスインフラと(企業としての)体力、そして投資意欲に大きな違いがある」と強調した。
現在、国内ではDynamics 365パートナーとして120社を超える企業と提携しているが、このエコシステムを拡充すべく、「Microsoft CSP(クラウドソリューションプロバイダープログラム)を通じて、これまでDynamicsシリーズを扱っていないパートナー企業にも参加してほしい」と呼び掛けた。