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白雪姫の「魔法の鏡」はつくれる--科学者がAIを使ったら

大関真之

2016-12-07 07:00

 「鏡よ、鏡、鏡さん、世界で一番美しいのは誰?」

 白雪姫で出てくるお妃さまの名文句である。「魔法の鏡」はこの世のあらゆることを知っていて、聞けばどんな質問にも答えてくれる。そんな「魔法の鏡」が現代のわれわれの世界では実現しつつある。

 魔法の鏡を実現するカギとなるのが「深層学習」(脳の神経回路の特性を模した数学モデルである「ニューラルネットワーク」に対する機械学習の手法:Deep Learning)である。

 犬や猫の識別ができる。囲碁に勝てる。さらにはさまざまなイラストや写真を自動的に生成することすらできる。これらはすべて、この世にあるデータから習得した経験に基づいて獲得した能力である。画像データに限定すれば、いわば人間の目の代わりをするというわけだ。画像1つとっても絵画や風景の写真の事細かな細部に至るまで学びとることができるとなれば、専門家に近い水準の能力を獲得しているといえよう。

 そんな専門家の目は、人間社会においては多くの修練を積んだ暁に得ることのできる特殊技能である。医者が医療画像や幾つかの情報から診断をするためには相当の訓練を要するし、陶芸家が作品をちょうど良い加減の火力で、所望の焼き色に仕上げるのにも長い修行が必要である。

 その途中では何度も試行錯誤し、自分の経験を通してようやく特殊技能を獲得する。これが機械学習を利用すれば、世の中にありふれている多くのデータをかき集めて、そこから法則性を抽出することで、その特殊技能を獲得する。法則性がつかみやすく、公開データが多く用意されている分野については、急速にその応用が進んでいる。

 そのような活用法は、科学の研究の舞台で急速に進展している。氷を冷凍庫の外に出しておくと、水になり、さらに火で温めると水は水蒸気へと姿を変える。「相転移」と呼ばれる現象だ。その身近でありふれた現象は、つまらないものと思うかもしれないが、よくよく考えてみると驚くべき現象である。


「氷[固体]・水[液体]・水蒸気[気体]の状態にあることを「相」と呼び、この相の間を移り変わることを「相転移」と呼びます」(科学未来館ブログから引用

 水を始め身近な物質は、実は小さな粒の集まりでできている。水は水素原子が2つと酸素原子がくっついた水の分子がたくさん集まることでできている。氷と水、水蒸気は、どれもこの水の分子がたくさん集まることでできていることには変わりがないのだ。同じものでできている。それでも氷と水、水蒸気といったように、僕らが見ている水は姿形が、温度によってまるで違うというわけだ。

 そのような相転移現象は、水以外にも多くの物質で起こっている。温度だけではなく、圧力や他の外的要因により、物質は姿形を変えている。中身は同じものでできていたとしても条件によって違う振る舞いを見せる。相転移現象を研究するためには、そのような小さな粒の振る舞いを同時に考慮して、天才的な数学を駆使した研究を進めなければならない。

 超絶に難しい問題であれば、コンピュータシミュレーションを駆使して、仮想的な実験を繰り返すことで状況証拠を積み上げ、どのような条件の時には氷となり、水となり水蒸気となるのかを追求していくのだ。

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