東京藝大に限らず美術系大学の入試で必ず課される科目、それはデッサンである。藝大に現役合格をした何人かに話を聞くとデッサンを描くには感性の力ももちろん重要であるが、図形的に物事をとらえる論理的なスキルが多分に必要とされるそうだ。
事実、東京藝大の油絵科には元メーカーのエンジニアであった技術者が合格したという話を卒業生の現役の画家から聞いたことがある。
また私の知り合いで変わり種の藝大大学院生もいる。彼は文学部で美術史を専攻し卒業の際に理論のみを学んでいた自身に気づき、実践を身につけなければならないと感じ藝大の受験を決意したのだ。
とはいうものの美大を目指す人々は幼少の頃から先に記したように、抜群の感性を持ち、いわゆる絵の才能があると言われ10年以上も絵の鍛錬を重ねた人々ばかりである。
彼は大学を卒業後に初めて本格的な受験デッサンを開始したゆえ、ライバルとのギャップを埋めるためには、いかに効率的に上手く描けるようになるかを考えるようになった。
元来、数学が得意であった彼は図形的な思考法を持って一定のロジックを身につけ理解、実践すれば“感性豊かな絵の天才たち”に負けずに合格できると判断し実践し続けた。その結果、本格的な絵を描き初めて2年間で最難関の東京藝大に合格したのである。
つまり彼は2年をかけて合格するためのアルゴリズムを自ら発見し開発したのである。彼の一言「あいまいな感性よりもロジックを身につけ実践するほうが美大合格のためには必要です」との言は今もって印象深い。
このようにアートは決して、感性のみで構成されているものではないのだ。
筆者が主宰する絵を描いて脳を活性化し新たな知覚と気づきを手に入れる講座ART&LOGIC(アートアンドロジック)の講師の絵