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AI開発に実用される量子コンピュータ--人工知能研究を加速 - (page 3)

大関真之

2016-12-21 07:00

 何度も繰り返し同じ問題を計算した結果がリスト上に掲載されて、その中から「最適な解答」を選ぶのだ。これをどうみるだろうか。量子アニーリングの理論では、最適な解答を「確実に」求めることができるとされている。

 しかしD-Waveマシンでは現状、最適な解を「確実に」求めることはできないでいる。物理の法則によりD-Waveマシンの中で計算を行う部分が「冷えて」しまうからだ。D-Wave Systems社のMohammad H. Amin氏によって行われた評価(Phys. Rev. A 92, 052323 (2015), この論文は誰でもarXivから読める)によると、冷えてしまう前に計算を終える必要がある。

論文Phys
論文Phys. Rev. A 92, 052323(2015) より引用。横軸は計算にかけた時間。縦軸は得られた「最適な解答」が正確である確率を示す
D-Waveマシンの振る舞いを予測した結果は青線で示しており、現状のD-Waveマシンの計算時間に相当するのは緑色の領域である
この緑色で示されたQuasistatic(準静的)領域は「冷えて」しまった状態となることを示しており、赤線で示された量子アニーリングの理想的な環境において期待される性能とはかけ離れたものとなっていることがわかる

 そのためにはもっと高速に操作をする必要があり、その点の改良が進んでいるそうだ。それでは「最適な解答」を確実に出すことのできない欠陥商品なのだろうか。日本であればそれは失敗と言われ、がっかりされてしまうのがオチである。

 しかしながらそこに可能性を見出しているのが、北米を中心としたD-Waveマシンを利用するユーザーたちだ。これを機械学習で最も計算時間がかかっているボトルネック部分の解消に利用しようという動きがある。

 多くのデータからその法則性を読み解き、コンピュータがその法則性に基づき、さまざまなタスクをこなす機械学習技術が注目されて久しい。現状その勢いはとどまることを知らず、犬や猫の画像の単純な識別のみならず、学習したデータから似たような画像を生成することで、「想像」することすらできるようになりつつある。

 われわれ人間と機械とで異なるのは、この想像の部分であるという声もあるが、実は機械学習を用いることで、これまでに得られたデータに基づいて、それに近しい画像を次々と生成することができる。

 画像に限定する必要はなく、音声やテキストなども対象となる。人間が想像する際にも経験に基づいていることは間違いなく、機械がまさに人間の知能に近づいている足音がして聞こえてくるではないか。その技術の基本となるものが「ボルツマン機械学習」だ。

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