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ITは「ひみつ道具」の夢を見る

知的存在としてのIT(前編)--テクノロジはクリエイティブを担えるか - (page 2)

稲田豊史

2016-12-24 07:00

 実は、AIの「作家憑依精度」を上げる余地はある。収集データの幅を発表作品だけに留めず、もっと広げるのだ。作家の講義録やインタビュー記事はもちろん、TVやラジオ出演時の映像や音源なども音声認識でデータ化し、読み込ませればよい。作家の作家性というものは、彼の発するすべての言葉に宿っているからだ。

 その作家がTwitterなどのSNSを利用しているなら、ちょっとした愚痴やつぶやきレベルの投稿も貴重なデータとなりうる。SNSのソーシャルグラフから趣味や友人関係を洗い出せば、パーソナリティもより深く解析できるはずだ。

 今や現代人は、多かれ少なかれネット上に自らの思想の「痕跡」を残している。作家がデビュー前に書き連ねた10年前のmixiの日記や、5年前のTwitterのリプライ――それすらクリエイティビティ再現の重要な構成要素だ。今や、ネットには「人格ごと落ちている」と言ってもいい。これらをすべて拾い集めれば、その作家の新機軸となる作品を、“彼自身より早く”発表できるかもしれない。


ナウシカの続編も可能!?ジブリの教科書〈1〉風の谷のナウシカ

 収集情報の量と分析速度は、テクノロジの進化によって、今後も等比級数的に向上するだろう。そうなれば、テキストだけで構成されている文学のみならず、マンガやアニメーション作品すら、テクノロジの力だけで創作できる可能性もある。「まんが製造箱」と「アニメーカー」が現実のものとなれば、われわれは鳥山明の“新作”や、「風の谷のナウシカ」の“続編”を、発表作品の単行本やDVDとネット上の流通情報だけで制作できるようになる……かもしれないのだ。

 テクノロジによる「芸術」の創造譚が夢物語に過ぎると感じるようなら、もう少し現実感のある「表現物」の話をしよう。ここで取り上げたいのが、「ドラえもん」に登場する「もはん手紙ペン」【*3】だ。

 「もはん手紙ペン」は礼状や恋文など、伝えたい目的がはっきりしている手紙の文面を、行儀の良い修飾句で飾った「模範的な美文」として自動書記してくれる道具だ。意地悪く言うなら、バリエーション豊富な文例集のリアルタイム出力ツール、もしくは定型文コピペ&アレンジツールである。

 「もはん手紙ペン」から想起されるのが、昨今のキュレーションメディア騒動だ。ご存知のように、一部のキュレーションメディアは、「ページビュー(PV)が取れそうなテーマについて書かれている複数の既存記事をパクって再構成(切り貼り)し、それっぽい記事にロンダリングする方法」をご丁寧にマニュアル化し、ライターに配布していた。

 このような盗用記事の量産に一役買ったと言われているのが、「リライトツール」と呼ばれるソフトウェア群である。これは、ある文章を入力すると、文章の構造はそのままに、使われている単語や言い回しを自動的かつ瞬時に変更してくれるもの。要は、ネット上にある誰かの文章をそのままコピペすれば、一瞬で元の文章の形跡を消し、「リライト」してくれるというわけである。

 ライターからすれば、関連記事を読み込んで脳にそれを蓄積し、自分で一から文章を作り上げるよりも、リライトツールにコピペして形跡が消えた文章に、ちょちょいと手を加えたほうが、圧倒的に楽ができる。短時間で記事を量産したいライターは、このリライトツールを大いに活用していたという。

 仮に「もはん手紙ペン」の仕組みが、「ネット上に無数に存在する定型文のフォーマットを瞬時に参照し、その文章構造をベースにして、使用者固有の要素(一人称や相手の名前など)にちょちょいと改変して出力する」というものなら、それはリライトツールを愛用する怠慢ライターの業務スキームと、まったく同じだ。


一部のキュレーションメディアの記事は非公開になった

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