さらに、次世代AIへの取り組みに向けては、産業技術総合研究所、大阪大学、東京大学との大型連携により、NECにない技術を補完。「AIはさまざまな企業が参入しており、レッドオーシャンのように見えるが、ある領域に絞り込むと、まだまだ攻めるところがあり、ブルーオーシャンと言える」とした。
西原執行役員は、現在のAI技術では社会ソリューション特有の要件を満たせていないと指摘。「画像や映像、センサーなどから得られる生データから意味を解釈することができないこと、専門家やアナリストの経験に依存しなくてはならないこと、事例が少ない異常事態や自然災害といったデータ蓄積が少ないものへの対応ができないこと、IoTを活用する際に電力制約があることなどの課題がある。
NECでは、世界ナンバーワンの映像認識技術や、専門家に依存しない特徴量の自動抽出技術、スモールデータからも可能な機械学習技術、数十ワットで動作可能なAIプロセッサの開発といったブレイクスルー技術を持つ。良いポジションにいると考えている」と語った。
また、人材マネジメントでは、AI技術研究者を2018年度までに300人に拡大する計画に対して、10月時点で220人体制となっており、前倒しで進捗していることを強調。「学会に参加している優秀な研究者をベンチマークして採用しているほか、新規採用のうち、約4割にグローバル人材を採用。AIを社会実装する際に発生する各種課題を解決するために、数理の人材だけでなく、人文学や法学分野など多様な人材を採用している」という。
現在、AI関連の研究者が全体の約7割を占めており、予算規模では約50%がAI領域だという。「AIに関する研究者や予算規模は、今後拡大していくことになる。AIに関しては、筋肉質な研究体質の確立を目指す」とした。
NECでは、具体的な最新技術についても説明した。
予測分析自動化技術は、現在、個々の領域の専門家が時間をかけて実施している分析作業を自動化する技術。多種多様なデータをもとに、専門家の経験と勘に頼らず、特徴量を自動的に探し出す世界初の技術である「特徴量自動設計」、性質の異なるさまざまなモデルを探索し、高精度に予測するモデルを自動生成する「予測モデル自動設計」によって構成。専門家による試行錯誤プロセスを自動化することで、2、3カ月掛かる分析期間を1日に短縮することができるという。
予測分析自動化技術で予測するモデルを自動生成
「すでに三井住友銀行での採用が始まっており、金融商品やサービスの見込み客の抽出にAIを活用。わずか1日で同等以上の予測精度で結果を導き出したほか、熟練データサイエンティストも気がつかなかった顧客の特徴を発見することに成功した」。
「マネージドサービス事業を大幅に効率化し、アナリストの生産性を大幅に向上。非専門家でも簡単に分析できるほか、クラウドサービスとしても提供できることから、急成長する分析セルフサービス市場における競争優位性を発揮できる」(NEC 西原基夫執行役員)としている。