脳型コンピューティングは、脳の電気的活動を模倣するアナログ回路の活用によって、AI処理の電力効率を1万倍以上改善し、省電力化を実現するものだ。
東京大学と連携して開発しているこの技術は、ブレインモルフィックモデルと呼ぶ、脳の構造を意識したモデルを採用。ナノブリッジと呼ぶNEC独自の技術を活用した専用アナログ回路で、ハードウェア処理を行う際に、電球1個分(約20ワット)の消費電力で済むという。エッジデバイスにおいて、リアルタイムでAI処理を行う環境が実現できるという。
脳型コンピューティングを実現するためにNEC独自のナノブリッジ技術を活用
さらに、暗号化データを複号することなく、データ処理を行うことで、情報漏えいリスクを解消できる「秘密計算」では、従来技術では計算処理が遅かったり、用途が限定されるという課題があったが、高速に処理できるマルチパーティ計算技術の開発に成功。競合他社とのパフォーマンス比較では30~40倍の速度が出せるという。
秘密計算のデモストレーション
「情報漏えいリスクを根本的に変えることができる技術になる」とした。
さらに、犯罪捜査支援ソリューションでは、これまでの顔認証技術に加えて、音状況認識、群衆行動解析、遠隔視線推定などの新たな技術と組み合わせることで、犯罪捜査の早期解決だけでなく、犯罪直後の初動の迅速化や、犯罪の未然に防止につなげられるとする。
音状況認識技術では、悲鳴や罵声、ガラスの破壊音、ピストル音などの不審な音を検知。監視カメラを用いなくても犯罪発生を理解。群衆行動解析では、数万人規模の混雑下でも、異常な人の動きを正確、かつ高速に予測。誰がどう動くかを予測することで、犯罪発生と思われるシーンを理解できるという。
音状況認識技術では、悲鳴や罵声などの不審な音を検知
群衆行動解析では、数万人規模の混雑下でも、異常な人の動きを予測
また、遠隔視線推定技術では、10メートル離れた場所に設置した監視カメラを使用して、複数の人がどの方向を向いているのかを検知。不審な視線を検知して、犯罪の未然防止につなげるという。この技術は店舗の陳列棚で顧客が注目している商品を自動認識したり、デジタルサイネージの画面上で注目しているコンテンツを把握することなどに応用できる。
遠隔視線推定技術では、監視カメラを使用してどの方向を見ているのかを検知