文部科学省科学技術・学術政策研究所は、日本の民間企業におけるイノベーションの実現やそれに向けた活動の状況及び動向を調査するため、2002年度から民間企業を対象とした「全国イノベーション調査」を実施しいる。第4回調査結果(参照期間:2012年度から2014年度まで)を紹介する。
第4回全国イノベーション調査は、OECD(経済協力開発機構)とEurostat(欧州委員会統計総局)が作成する国際標準に準拠したイノベーションに関する日本の公式の一般統計調査である。この調査では、常用雇用者数で10人以上の民間企業(一部の産業を除く)38万224社を対象母集団として、2万4825社を標本抽出し、うち1万2526社から有効回答を得た(有効回答率50%)。
本調査の主な結果は以下の通り。
- 母集団のうち、40%(15万2939社)の企業がプロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーション、組織イノベーション、またはマーケティング・イノベーションのいずれかのイノベーションを実現した。
- 母集団のうち、20%(7万7830社)の企業が、プロダクト・イノベーション又はプロセス・イノベーションを実現した。また、23%の企業はプロダクト・イノベーションまたはプロセス・イノベーションに係るイノベーション活動を実施していたが、残りの77%の企業はイノベーション活動を実施していなかった。
- プロダクト・イノベーション実現企業のうち、市場にとって新しいプロダクトを導入した企業の割合は、中規模企業よりもむしろ小規模企業の方が高い。
- プロダクト・イノベーション実現企業が導入したプロダクトは、自社のみで開発されるだけでなく、他社や他の機関と共同で開発された割合も高い。イノベーションのための協力相手として、大規模企業では大学などの高等教育機関も主要な協力相手であった。
- 能力のある従業者の不足は、イノベーション実現を阻害した要因として最も多くの割合の企業に経験された。
この統計報告は、科学技術・学術政策研究所のウェブサイトから入手できる。
イノベーション実現及びイノベーション活動実施
調査参照期間である2012年度から2014年度において、母集団のうちの40%の企業、すなわち15万2939社が、プロダクト・イノベーション、プロセス・イノベーション、組織イノベーション、またはマーケティング・イノベーションのいずれかのイノベーションを実現した。
母集団の20%の企業、すなわち7万7830社はプロダクト・イノベーションまたはプロセス・イノベーションを実現した。また、23%の企業はプロダクト・イノベーションまたはプロセス・イノベーションに係るイノベーション活動を実施していたが、その一方で、残りの77%の企業は、イノベーション活動を実施していなかった。
イノベーション活動を実施したが、プロダクト・イノベーションまたはプロセス・イノベーションのいずれも実現せず、未完了に終わった活動のみを有する企業の割合は、全体の3%にすぎない。つまり、プロダクト・イノベーションまたはプロセス・イノベーションの実現は、イノベーション活動を実施するかどうかの選択に強く依存したといえる。

図 1 イノベーション実現企業の割合(対全企業):製造業及びサービス業 企業規模階級別(単位:%)

図 2 イノベーション活動実施企業の割合(対全企業):製造業及びサービス業 企業規模階級別(単位:%)
(参考)イノベーション実現―第3回調査との比較
第3回調査と比べて、プロセス・イノベーション実現企業の割合がわずかに増加している(製造業において20%から25%に増加)ものの全体として、イノベーション実現の割合に大きな変化は見られない。しかし、プロダクト・イノベーション実現企業の割合は、第3回調査と比べ、14%から12%へ減少している。
特に、中規模企業では19%から16%へ減少しており、その減少幅は小規模企業(12%から11%へ減少)よりも大きい。一方、大規模企業は小・中規模企業とは異なり、25%から27%へ増加した。また、製造業とサービス業では、第3回調査と比べてプロダクト・イノベーション実現企業の割合が減少したという。

参考-表 1 イノベーション実現企業の割合(対全企業):製造業及びサービス業企業規模階級別(単位 : %)