Fintechの正体

「生体認証ブーム」に「おつり貯金」--2017年以降のFinTechを予想 - (page 2)

瀧 俊雄

2017-01-04 07:00

 また、2017年には銀行のAPI化がさらに進み、更新系APIも出てくるでしょう。銀行取引のニーズというものは、銀行の中ではなく、銀行の外で生まれるものです。今後重要なのは、意思決定と行動がシームレスにできることです。そこで、API経由によりアクセスしたデータを更新させるやりとりに用いられる「更新系API」が活躍することになります。

 一番わかりやすい活用事例として挙げられるのは、「少額の貯金」です。これが2017年には登場するかもしれません。社会を動かすほど大規模な話ではありませんが、すでに取り組もうとしているプレーヤーも多くいます。

 海外でこのテーマで参考になるのがスウェーデンの「QAPITAL」というウェブサービスです。さまざまな「アクション」に連動して、自動的に貯金をさせます。

 アクション連動とは「IFTTT」などで見られたように複数のウェブサービスを連携させて動作することを指します。そのようなサービスの特徴は、自分が手を動かさなくてもアプリが勝手に何かを行うように設定できる点です。

 QAPITALは「気温が24度を超えたら」「何キロ走ったら」「何時間睡眠時間が確保できたら」という条件が満たされたときに、2ドルずつなどの金額を勝手に貯金していきます。


 どうやって貯金を生活になじませるのかが重要ですが、「運動したら」などのトリガーで自動的に貯金ができるところが特徴です。

 他にも、おつりを使った貯金ツールに取り組む例が増えてくるものと考えています。人間はお金を使った瞬間に、本当にその買い物に価値があったのか、小さな不安を覚えます。

 そのようなときに端数を切り上げたような少額の貯金ができると、罪滅ぼしのようにプラスの感情を持つことができます。この効果に着目して、持続的に買い物をするときにおつりを貯められる仕組みは、米国では「Acorns」などのサービスが効果的に利用し、多くの人に用いられるアプリとなりました。

 少額でも貯金や投資領域に人々に興味を抱かせる点は重要なテーマだと思います。人間の不安の大半は、ほとんどのケースで貯金そのものや、その習慣の不足に起因しています。そのため、特定の条件で勝手に貯金してくれるようになれば、不安が減るのです。

 お金を増やすためには、(1)収入を増やす (2)支出を減らす(3)投資で増やすの3つしかなく、(1)と(3)は難しいため、(2)が身近です。

 しかし、人間はこれがなかなかできないものです。「急に必要になったから」など、自分を誘惑する方法はいくらでもあります。そうであれば、「自分からなんらかのルールに基づいて強引にでも貯金していく」という方法が有効です。今まで貯金は賢い人がやる行為として捉えられていたため、世の中の金融リテラシーが高まりませんでしたが、FinTechで誰でも貯金ができるようになる時代が近づいているのでは、と考えています。

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