Fintechの正体

「生体認証ブーム」に「おつり貯金」--2017年以降のFinTechを予想 - (page 3)

瀧 俊雄

2017-01-04 07:00

 2017年のさらに先、2018年についても予想してみましょう。2017年にAPIの公開が当たり前となり、おつり貯金も可能になったとします。その次に来るテーマは、個人データのポータビリティや利用、活用だと思います。

 データポータビリティという概念は、実際に広く理解や支持を得ていくまでには時間がかかるでしょう。ただ、マネーフォワードとしても、データが安全に個人のために使われる社会にしたいと考えています。まずはデータポータビリティを「ユーザーのデータはユーザーのものである」と定義することから始める必要があるでしょう。

 データポータビリティの議論のなかで、マイナンバーを金融情報と併せて活用していく動きが現れることが予想できます。「マイナンバーに個人情報が紐付いている」というのは怖いことに聞こえますが、マイナンバーの仕組みがきちんと活用されないことの方が、社会的なロスは大きいといえます。

 例えば震災で家が半壊して、生活に向けた補助金を申請しようとしたときに、市役所の本人を確認する部署が機能しておらず、同じ人に2回振り込まれてしまうというトラブルが、実際に起きてしまっています。同時に、このようなトラブルをおそれて、補助金自体がなかなか得られないという状態も発生しています。

 大きな無駄が発生してしまいますが、マイナンバー制度が適切に活用されていく状況を作ることができれば、それを防ぐことができるかもしれません。そしてその上で、銀行のデータを市町村のデータに連結して、自治体の保育施設の補助金を得たり、逆に銀行側で、地域で得られるサービスに連動したアドバイスを得られる可能性もあります。

 「マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(Ver.2)案」において、2018年頃にはマイナンバーの利用範囲を公的個人認証にまで進め、結婚やパスポート発行の場面で活用したいという方針が出ています。マネーフォワードもこの中で機能を提供することができれば、その手始めとして自らの住所変更と銀行の住所変更が同時にできるようなサービスを提供することも可能となっていきます。

 そのほかにも、2018年以降は今まで頻繁にされることのなかった保険や不動産取り引きが、よりカジュアルになる可能性があります。家は持たずに借りたり、車もレンタカーやUberを使うという「持たない生活」は、この先も進んでいくでしょう。家や車は、従来は貯金をしたり借入をしたりして買う物の代表格でした。しかし、今後は借りる選択肢がより色濃く選択可能となる中で、一般的な「生活費」のあり方も変わってくると思います。そのような側面に合わせて、われわれのサービスも変わっていければと考えています。


マイナンバー制度利活用推進ロードマップ(Ver.2)案 から引用

この記事はマネーフォワードの 瀧 俊雄氏が語った内容をZDNet Japan編集部が再構成している

瀧 俊雄
取締役 兼 Fintech研究所長
1981年東京都生まれ。 慶應義塾大学経済学部を卒業後、野村證券入社。野村資本市場研究所にて、家計行動、年金制度、金融機関ビジネスモデル等の研究業務に従事。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年よりマネーフォワードの設立に参画。自動家計簿サービス「マネーフォワード」と、会計や給与計算、請求書発行、経費精算などのビジネス向けクラウドサービス「MFクラウド」シリーズを展開している。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」に参加。金融庁「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」メンバー。

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