これまでの回では、計算機や音楽プレーヤーなどの過去から現在までの発展・変化に伴うUXやUIの変遷、あるいは公共交通や地図などの現在のUI/UXを見てきた。
今回は、まだ見ぬような種類のものまで含むユーザー体験(User eXperience:UX)を考察してみたい。まだ見ぬ未来を描くものといえば、SF(Science Fiction)である。
「UXデザインにおいては、観察が重要」ということはこれまで繰り返し述べてきた。しかし、「これまでになかった」ものに関しては直接観察できない。それらを扱うためには(過去に観察を通じて積み上げた知識をベースにして)想像を巡らせ、自分で想像する世界を自分で「観察」することが必要になる。
SFはそうした考察や思考実験を行う格好の題材でもある。今回は、ロボットに関していくつかのSFに登場する事例を起点に話を進めていきたい。
ヒューマノイドロボット
かつてはSFの中だけの話であったが、かなり現実になってきているものの1つが、ヒューマノイド(人間型)ロボットである。ここではまず、人間と同様に人間とやりとりしつつ、何らかの仕事をこなすようなヒューマノイドロボットを見ていきたい。
ロボットが人型を模すことにはいろいろな意味合いがある。そのうちの1つは、人型であることにより、接する人間が親しみを持ちやすく、できそうなことなどを認識しやすいであろうということである。また、人間が使う・作業することを想定した道具や環境を、ほぼそのまま使えるということも1つである。
人間は(主に)社会の中で多くの他の人間に囲まれて生活しており、集団でいろいろと協調することができ、またそうしたことに慣れている。その「慣れ」を生かし、できるだけ特別な知識を必要とせずに「直感的」に使えるようにする、というのがヒューマノイドロボットの1つの目標であると言ってもよい。
かなり進歩したとはいえ、さすがに現状ではまだまだその目標には遠い。ここで、SFの世界を見てみよう。