2.クラウド:クラウドプロバイダーは成熟し、AWSはリードを広げる
Amazon Web Services(AWS)のカンファレンス「re:Invent」でもっとも興味深かったのは、同社がエンタープライズ顧客をしっかりと捕らえるようになっていること、そしてIaaS(サービスとしてのインフラストラクチャ)に全力を注いでいることが明らかになったことだ。他の事業が停滞しているわけではないが、AWSはたやすくAmazonの収益の柱となった。現在のAmazonは基本的に、(少なくとも決算の観点から見れば)小売事業にも多少手を出しているエンタープライズクラウド企業だと言える。
しかしクラウド市場では、Amazon以外にも多くの注目すべき変化があった。
- Googleは明らかに、人工知能(AI)と機械学習をアピールポイントにしようとしている。今後機械学習とAIは、あらゆる立場の主要なプレイヤーにとって、クラウド化を推進する理由になるだろう。
- Microsoft Azureはハイブリッドクラウド市場で勢いを得ており、オープンソースや「Docker」などのテクノロジを立て続けに取り込んで、市場を驚かせ続けている。
- IBMはPaaS(サービスとしてのプラットフォーム)事業を充実させ、「Watson」と結びつける取り組みを続けている。
その他には、Oracleのクラウド事業が急速に成長しており、NetSuiteを買収したことで、今後も拡大が続くとみられる。またSalesforceは自社のサービスに人工知能を組み込むための取り組みである「Einstein」をリリースした。
2016年を振り返ると、クラウドのターニングポイントが明らかになるはずだ。2010年代の前半は、クラウドについてわれわれは大いに話題にした。今、エンタープライズアーキテクチャを構築するための主な手段として、クラウドサービスは背景に溶け込もうとしている。革命は続くが、より裏方へと移る。
3.Apple:停滞を打開できず
2016年を振り返るとすれば、Appleが並の企業に戻りつつある年であるという点を挙げないわけにはいかない。同社がテクノロジ業界でもっとも収益性が高く、世界でもっとも時価総額の高い企業だったとしてもだ。経済的指標が良好でも、Appleについての長期にわたる懐疑的な見方をなくすことはできなかった。ライバル企業はシェアを伸ばし続けており、Appleが新たな市場を開拓したり、次の革命を見いだそうとしたりしているようにはあまり見えない。