筆者がこの数カ月間交わした議論の中で、「デジタル変革」というテーマが繰り返し取り上げられた。
これはバズワードではあるが、この一言にさまざまなアイデアが詰め込まれているという点で興味深い言葉だと言える。
色々な企業から異なる説明を聞くうちに、筆者はこの言葉を役に立つ便宜上の表現だと考えるようになった。さまざまな定義の裏側には一貫したテーマがある。それは、現代のITを基盤として起こっている地殻変動について聞き手に考えさせることであり、その変化がビジネスに与える影響について考えさせることだ。
何らかの便宜的な表現が存在することは重要だ。あまりにも多くのことが起こっているため、それらを分かりやすい形でまとめることには意味がある。では、実際にはどのような変化が起こっているのだろうか。
過去40年間にIT業界で起こってきた他の変化と同じく、この変化も、前の世代のテクノロジを基盤とする、すでに出来上がった環境を利用した、さまざまなものの組み合わせだ。
第1の波はメインフレームの登場、そしてビジネスのプロセスやサービスの自動化を可能にする技術の始まりだった。
その後、PCやオフィス間ネットワークが登場し、アプリケーションをユーザーインターフェースとビジネスロジック、そしてデータに分割することを可能にした、クライアント・サーバ型のアプリケーションを作るために必要なツールが手に入った。さらに、グローバルなネットワークとウェブブラウザの登場が、分散型のn階層アーキテクチャに基づいて、どこでもコンピューティング能力を利用できる、今日のモバイルコンピューティングの世界を生み出した。
現在のIT業界を見れば、これまでどのような道をたどってきたかを知ることは容易だが、今では、業界が次にどこへ向かうのか、またそこへたどり着く過程で、業界の各領域がどのような軌跡をたどるのかも予想できる。
その軌跡は、筆者がこの数年間に書いてきた記事を読めば分かるはずだ。それらの記事では、マイクロサービス、API、クラウドアーキテクチャ、コンテナ、IoT(モノのインターネット)、クロスプラットフォームモバイル開発、サーバレスコンピューティング、ローコード開発技術の台頭などを扱ってきた。しかし実は、この大きな変化の波を1つに結びつける切り口がある。インフラの捉え方としてのクラウドだ。

ユーザーはデジタル変革を期待しており、ITを提供する側の人間はそれを実現する必要がある。
提供:Getty Images/iStockphoto