山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

2016年に中国人が注目した日本とは

山谷剛史

2016-12-27 07:30

 今年中国のネットユーザーが関心を持った日本は何か。また非ネットユーザーもあわせた、より大衆層がイメージする日本とは何か。いくつかデータを紹介していこう。

 百度のGoogle Trendのような検索傾向がわかる「百度指数」で「日本」をキーワードに検索すると、震度7の熊本地震のあった4月14日と16日、それに福島沖でM7.4の地震があった11月22日に、突出して日本を検索していたことがわかる。それに比べれば遙かに小さな波だが、金曜~日曜の週末は日本の単語が他の曜日より多く検索される。これはアニメやドラマなどのコンテンツを、学生であれば宿題のないこのタイミングで見ることが多いためというのはある。

 「日本」の後に続く絞り込みの検索ワードでは、ポルノコンテンツ関連が最も多い。それ目当てに日本というワードで検索する人は多いことが、日本の単語で検索する人は、男女比でおよそ8対2と偏っている一因だろう。また年齢では20代、30代が最も多い。検索ワードでこうした単語を除くと、漫画やアニメや映画が続く。中国向け配信が行われていなかったり、映画館のみで上映されるコンテンツ名で検索すると、残念ながら海賊版のダウンロードをするための単語が最もよく使われている。

 また海外旅行先として、日本はタイや韓国と並んで最も人気になっていることから、「地図」もよく検索されている。閉じた中国のインターネットでは、中国産の地図アプリは頼りないことから、中国で利用できないGoogle Mapにも関心を持つ人もいる。また旅行するとなると、「両替レート」も気になるわけで、こちらも多く検索されている。また両替レートは、日本の商品を越境ECで購入したり、日本の価格チェックをする人にも利用されるが、日本のECサイトで最も定番なのがアマゾンで、この中国語「亜馬遜」の検索数も多い。

 百度指数に加え、IT系ニュースサイトであり価格比較サイトである「中関村在線」への商品検索の傾向で見ると、中国市場の中での日本製品では、2010年前半からテレビやパソコンやデジカメなどの家電類は注目が右肩下がりの一方で、自動車は右肩上がりとなっている。

 また日中間の政治問題や、領土絡みの話題が起きると一定数検索が伸びる。日中関係では、政治と民間は切り離すという考えがよくある。つまり中国人から見れば、中国政府としばしば対峙するように見える日本政府と、日本人や観光地日本や日本のコンテンツは別物というわけだ。

 変わらぬ人気のコンテンツは別として、メディアで見る日本や、旅行先の日本をどう思うのか。10月に中国社会科学院日本研究所が発表した、中国人の対日本の世論についてその一部分を紹介したい。これは対象がネット利用者だけではない、よりマスが対象となる。

 日中関係を重要だと思う人は72.5%で、2010年の92.5%よりは下がっているが2014年を底に再度上昇している。また日中関係は「よくない」と回答している。中国人が日本の情報を得る最も重要なメディアが「中国ニュースメディア」で89.5%となり、中国ニュースメディアの中でも、「テレビ(61.0%)」「ネット(30.0%)」となる。ネット言論については88%が民意を反映したものとなっていて、71.3%が「中国の報道は客観的」だとしている。

 日本についての良い印象としては「礼儀正しい、モラルがある(52.9%)」「環境が良い。美しい(51.7%)」「仕事に勤勉(49.1%)」がある。また日本に旅行に行きたいかという質問には40.9%が「行きたい」と回答。具体的には「観光旅行(83.2%)」「買い物(59%)」となった。

 全体を見た印象では、災害や事件や日中関係のぎくしゃくとともに日本に大きな関心がもたれるが、昨年やそれ以前と比べ日本に対する考え方や検索傾向に大きな変化はないように見える。

 だがそこには「旅行で行った日本が良かった」「知られざる日本のこれが良かった」といった草の根の伝播は見えない。草の根の伝播の力、SNSなどでの口コミ力は無視できないとは以前から言われている話。マスと草の根の両面から来年も中国を見ていきたい。

山谷剛史(やまやたけし)
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。現在NNA所属。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立(星海社新書)」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書)」など。

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