DevOpsは2016年を動かした力の1つになったと言える。開発者がものを作り、テストし、展開する環境としてのコンテナやツールに、将来を賭ける企業が増え始めたためだ。Dockerはエンタープライズ事業戦略に全力を尽くしているし、コンテナアプライアンスのアイデアを持ち込んだ企業もある。Hewlett Packard Enterprise(HPE)もDevOps戦略に力を入れており、「Kubernetes」も勢いを増している。この記事では2016年に起きたDevOps関連の重要な出来事を振り返ることにしたい。
Dockerがセキュリティ機能を持つライフサイクル管理製品をリリース
Dockerは「Docker Datacenter」をリリースした。このサービスとしてのコンテナ(CaaS)プラットフォームは、オンプレミスでアジャイルアプリケーション開発および管理を行うためのものであり、「Universal Control Plane」「Docker Trusted Registry」「Docker Engine」の3つから構成されている。方向付けから展開までを含むライフサイクル全体を管理するこのプラットフォームには、セキュリティ、オーケストレーション、コンテナランタイムのためのツールが豊富に用意されている。この製品は、開発者が組織内でDockerの正当性を主張しやすいものになっており、Dockerをエンタープライズ市場の代表的なDevOpsプラットフォームたらしめている。
Dockerがテストと開発からエンタープライズ市場にシフト
Dockerはもともとテストと開発のための技術だったが、新しいリリースとともに変化し、自らをエンタープライズ環境での本格的な利用が可能な技術と位置づけた。これは、このプラットフォームをエンタープライズ環境に持ち込みたいDockerファンの開発者にとってはいいニュースだと言える。2016年の初めには、Docker社はすでに「Docker」のエンタープライズ製品の有料ユーザーを75社以上持っており、「Docker Cloud」を有料で利用するユーザー企業も6000社あった。Dockerは現在も大企業に浸透し続けているが、Dockerが製品のセキュリティ向上のために取り組みを進めていることで、製品の魅力がさらに増し、企業に受け入れられやすくなっている(セキュリティが向上していることは米国防総省の複数の機関がDockerを使用していることでも明らかだ)。
Diamantiがコンテナアプライアンスをリリース
コンテナはこれまで、基本的に仮想的なものだった。しかし2016年4月に、コンテナのオーケストレーションソフトウェア「Kubernetes」へのコントリビューションを続けてきたDiamantiが、コンテナ利用環境をアプライアンスとして提供するというアプローチを持ち込んだ。コンテナはアジャイル開発に適した技術だが、インフラの整備がハードルとなって企業への導入は遅れている。アプライアンスという形を取ることで、開発者がエンタープライズアプリケーションをコーディング、テスト、展開するのに必要な環境の導入が簡単になる。
Dockerがコンテナの脆弱性をスキャンするセキュリティ製品をリリース
2016年のDockerは、エンタープライズ市場に浸透するための戦略に全力を尽くした。同社はその一環として、コンテナのイメージをスキャンして脆弱性を持つコンポーネントを発見し、問題をユーザーに通知する製品「Docker Security Scanning」をリリースした。同社はまた、「Docker Bench for Security」をアップデートし、安全なプラットフォーム、安全なアクセス、安全なコンテンツの3つの柱からなるセキュリティ戦略を推し進めた。
HPEが自動テストツールでDevOps市場に参入
HPEの「ALM Octane」は、品質を犠牲にせずに、DevOpsのプロセスを効率化するための製品だ。同製品はREST APIを使用して、開発者にマネージド自動テスト機能を提供し、連続的な統合プロセスを実現する。これは開発者とって、多くのアプリケーション開発で毎日のように発生するアップデートについていく手段が得られることを意味している。HPEはアプリケーション開発者をターゲットとしており、この市場におけるDevOpsの重要性を理解している。
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