ミリ秒単位のリアルタイム性が要求される金融サービス分野では、ビッグデータ関連のアプリケーションやベンダーに対する興味がひときわ高まっている。その理由は、アーキテクチャや規制、透明性、意思決定、スピードに対するニーズなどさまざまだ。
資本市場に特化したコンサルタント企業であるTABB Groupは最近、金融サービス分野におけるリアルタイムのビッグデータアナリティクスに関するレポートを公開した。そのこと自体、ビッグデータが注目を集めているしるしとなっている。今や専門的なコンサルタント企業がデータアーキテクチャの分析や検討に力を注ぐほどにまで、ビッグデータが金融セクターで注目されているのだ。ITRS Groupの依頼によって作成された同レポートの内容もこの結論を裏付けており、TABB Groupが話をしたすべての企業がビッグデータアナリティクスを利用中、あるいは試用中だと述べている。
金融セクターがビッグデータの利用で先行しているのは明らかだ。ただし、その理由や、ビッグデータの利用方法についてはそれほど明白とは言えない。「2016 Big Data Maturity Survey」(2016年のビッグデータ成熟度調査)と題された別のレポートの結論も加味すると、興味深い点が浮き彫りとなる。このレポートは、AtScaleが「Apache Hadoop」の大手ディストリビューションベンダー(ClouderaやHortonworks、MapRなど)の協力を得て作成したものだ。77カ国の1400社を超える企業で働く2550人を対象に実施したこの調査では、回答者の73%がHadoopを開発に利用していると答えている(前年は65%だった)。
これは、Hadoopがビッグデータの世界で存在感を高めているという、業界が抱いている一般的な感触と一致している。この点は金融セクターでも同様だと結論付けてよいだろう。実際のところ、ClouderaやHortonworks、MapRに目を向けると、これら企業はすべて、金融セクター向けの製品や、同セクターの顧客について具体的に言及するとともに、そこでの成功を誇らしげに語っている。その点に矛盾はない。ここでの競争は、ゼロサムゲームではないためだ。また、Hadoopに限られた競争というわけでもない。
金銭上の理由
ここで重要なのは「なぜか」という点だ。ビッグデータ関連のベンダーはなぜ、ハチが花の蜜にひかれるように、金融セクターに引き寄せられているのだろうか?金銭というのが自明の答えだ。金銭にひかれるのだ。金融セクターには豊富な資金があり、その悪習、あるいはニーズ(どの側面から見るかによって変わってくる)に対して金銭を支払う用意があるためだ。
金のなる木はない。金銭という実りがあるのは金融機関だ。このことは、ビッグデータ業界との関係を説明するうえで手がかりとなるかもしれない。