FinTechベンチャーが、新しい個人向けサービスを提供し始めている。2017年には、その数がますます増えると予想される。利用者は、金融機関のサービスとFinTechサービスを比較し、より使い勝手が良い方を選択できるようになる。多様な選択肢があることは、利用者にとってメリットである。2017年は、一般の消費者にとって「FinTech元年」になると予想する。
金融機関は、世界一厳しいと言われる日本の消費者の目で、FinTechベンチャーとサービスを比較されることになる。その結果、利用者がFinTechベンチャーのサービスを選べば、金融機関はFinTechへの対応を加速せざるを得ない。反対に、FinTechベンチャーのサービスが支持されなければ、金融機関は現状に安住してしまうかもしれない。2017年は、国内のFinTechにとって分水嶺となる可能性がある。そこで今回は、Fintechに関心のあるIT部門や金融機関の人間が試してみるべき、今後のFinTechの行方を左右するかもしれない個人向けFinTechサービスを紹介する。
仕込みの時期だった2016年
2016年は、年間を通じてFinTechが注目された年であった。2015年の後半から本格的に衆目を集めたFinTechだが、一方で単なるバズワードに過ぎず、2016年にはブームが去るのではないかと言う人も少なくなかった。しかし、2016年もFinTechは注目され続け、2015年以上の盛り上がりを見せた。FinTech専門誌が創刊され、FinTechへの投資は年間を通して盛んであり、海外からFinTechの有識者が来日するイベントも開催された。
一方、FinTechの代名詞となるような、誰もが知るサービスやベンチャー企業の登場は、2017年に持ち越された。ただし、それはFinTechが世の中に受け入れられなかったということを意味するのではない。一般の人々が手軽に利用できる個人向けFinTechが、まだサービスを開始していなかったり、開始していても利用者の獲得途上であったりするためである。国内のFinTechにとって、2016年は仕込みの時期であったと言える。国内でFinTechへの投資が本格化したのが2015年の後半からで、金融庁のFinTechサポートデスク設立が同年12月である。昨年の後半から今年の前半に投資を受けたFinTechベンチャーが、金融庁に相談するなどしてサービスを開発し、最近になって提供するようになってきた。
FinTechベンチャーのサービス開発は、ネットベンチャーよりも遅い印象を受ける。これは、規制への対応に時間がかかるためである。FinTechベンチャーの場合、規制に準拠するだけではなく、規制対象にならず利用者に同等の価値を提供する方法を考えることがある。例えば、送金の際は送金者の本人確認が必要であるが、そのコスト負担はベンチャー企業には重過ぎるため、本人確認を行わずに、実質的に送金と変わらない価値を利用者に提供する方法を考える。そのような新しい方法を現行法で想定していない場合、適法性の確認に時間を取られることになる。